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第60話 思ったより長くなってしまったよ、風紀委員室編
「はい」
と、龍ヶ崎の机にコーヒー入りカップをおいた。
「悠人」
「……な、に?」
「仕事わかる?」
「書類整理だし、ほぼ覚えた」
「わからなくなったら言って。教えるから」
「ありがと」
と、オレ。
名前で呼ばれるの、慣れない。
あんた、か、桜井。
このどっちかがよい。
風紀委員室では、最初は名字呼びだったのに、なぜか、下の名前呼びされるようになった。
「修ちゃんの、ここにおいとくから」
と、龍ヶ崎の隣の無人の机にコーヒーをおいた。
「え~、こっちに持ってきてよ」
と、すねた口調の修ちゃん。
「そろそろ仕事して下さい」
と、高槻くんが修ちゃんに言い切った。
「まだ感動の再会が続いてるんだけどなぁ」
と、修ちゃん。
「もっと再会ごっこがしたいんだったら、二人っきりになれるところで、じっくりゆっくり楽しみたいんじゃないですか? さっさと仕事済ませたほうが得策だと思いますよ」
と、けっこうしゃべった高槻くん。
再会ごっこ……。
高槻くんにはごっこ遊びにみえたんだ。
はたからみたら、デカイ男同士で抱きあって、何やってんの?
みたいな?
「修ちゃん、冷めるよ」
「は~ぃ」
と、修ちゃんは返事をしてから立ちあがった。
修ちゃんと、すれ違いざまににっこりと笑まれた。
「どうぞ」
と、永島にコーヒーを出したら、
「本当に桜井が淹れたの?」
と、永島。
「そうだけど」
「……お茶とか淹れるんだ」
と、永島。
かずくんと同じような反応。
オレって、何もしないと思われてる?
「もう何年も寮生活してるんだら、必要なことは一通りは出来るよ」
「意外。誰かにさせてるんだと思った」
と、永島。
してる、じゃなくて、させている…………。
誰がするの?
洗濯や掃除をしてくれる家政婦さんなんか、やとってないし。
なんでもしてくれる嫁、いませんよ。
なんでもやらせて下さい、という下僕もいないし(えぇっと、志願者みたいなのはいたけど、うっとうしいし、気持ち悪いから拒否った)
たま~にマジで、『家』絡みの家臣みたいな人がいて、生活全般を支えられている生徒もいるけど、ほんの一部だ。
龍ヶ崎も生活力のない人だと思ってたけど、違ってた。
料理はしないが、洗濯しているのは見た。
掃除しているとこは見たことないないけど、いつもきれいな部屋だ。
フロやトイレを掃除しているのも見たことない。
ても、きれい。
部屋にほとんどいりびたっていたけど、誰かと遭遇したことがない。
だから、龍ヶ崎本人が掃除をしている、と思う。
いつ、家事してんだろう?
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