60 / 69

第60話 思ったより長くなってしまったよ、風紀委員室編

「はい」 と、龍ヶ崎の机にコーヒー入りカップをおいた。 「悠人」 「……な、に?」 「仕事わかる?」 「書類整理だし、ほぼ覚えた」 「わからなくなったら言って。教えるから」 「ありがと」 と、オレ。 名前で呼ばれるの、慣れない。 あんた、か、桜井。 このどっちかがよい。 風紀委員室では、最初は名字呼びだったのに、なぜか、下の名前呼びされるようになった。 「修ちゃんの、ここにおいとくから」 と、龍ヶ崎の隣の無人の机にコーヒーをおいた。 「え~、こっちに持ってきてよ」 と、すねた口調の修ちゃん。 「そろそろ仕事して下さい」 と、高槻くんが修ちゃんに言い切った。 「まだ感動の再会が続いてるんだけどなぁ」 と、修ちゃん。 「もっと再会ごっこがしたいんだったら、二人っきりになれるところで、じっくりゆっくり楽しみたいんじゃないですか? さっさと仕事済ませたほうが得策だと思いますよ」 と、けっこうしゃべった高槻くん。 再会ごっこ……。 高槻くんにはごっこ遊びにみえたんだ。 はたからみたら、デカイ男同士で抱きあって、何やってんの? みたいな? 「修ちゃん、冷めるよ」 「は~ぃ」 と、修ちゃんは返事をしてから立ちあがった。 修ちゃんと、すれ違いざまににっこりと笑まれた。 「どうぞ」 と、永島にコーヒーを出したら、 「本当に桜井が淹れたの?」 と、永島。 「そうだけど」 「……お茶とか淹れるんだ」 と、永島。 かずくんと同じような反応。 オレって、何もしないと思われてる? 「もう何年も寮生活してるんだら、必要なことは一通りは出来るよ」 「意外。誰かにさせてるんだと思った」 と、永島。 してる、じゃなくて、させている…………。 誰がするの? 洗濯や掃除をしてくれる家政婦さんなんか、やとってないし。 なんでもしてくれる嫁、いませんよ。 なんでもやらせて下さい、という下僕もいないし(えぇっと、志願者みたいなのはいたけど、うっとうしいし、気持ち悪いから拒否った) たま~にマジで、『家』絡みの家臣みたいな人がいて、生活全般を支えられている生徒もいるけど、ほんの一部だ。 龍ヶ崎も生活力のない人だと思ってたけど、違ってた。 料理はしないが、洗濯しているのは見た。 掃除しているとこは見たことないないけど、いつもきれいな部屋だ。 フロやトイレを掃除しているのも見たことない。 ても、きれい。 部屋にほとんどいりびたっていたけど、誰かと遭遇したことがない。 だから、龍ヶ崎本人が掃除をしている、と思う。 いつ、家事してんだろう?

ともだちにシェアしよう!