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第62話 龍ヶ崎は自分の好みを強制するキャラじゃないだろうが

「濃いめで」 と、龍ヶ崎。 嗜好をいれて催促された。 龍ヶ崎の好みは濃いめのブラック。 知ってるけど、あえて、しなかった。 みんなの味を統一した。 自分でいれろ。 ……そう言えたら、どんなにいいか。 「ほかにおかわりの人、いる?」 と、オレ。 「ぼくが替わります」 と、高槻くん。 「新人の仕事」 と、オレは高槻くんを制した。 給湯室に入って、電気ケトルのスイッチを入れた。 「僕の好み把握してるでしょ?」 と、龍ヶ崎。 「来るんだったら、自分でいれろ」 「インスタントじゃなくて、豆で」 「個人の嗜好は無視しろっと、先生に教えられた」 「あぁ、高槻は合理的だからねぇ」 と、龍ヶ崎が小さく笑った。 龍ヶ崎が食器棚から、マグカップと挽かれているコーヒー豆を取り出して、オレに渡してきた。 銘柄はブレンド。 何と何が合わされているか、わからないけど、これがお気に入りらしい。 「サーバーとかどこ?」 と、オレ。 龍ヶ崎が食器棚の下段から一式を取り出した。 「ミルもあるけど、そこのコーヒーメーカーだとミル付きで10杯までいれれる」 「先生はインスタントでよいって」 「先生は先生。あんたは僕の好み、知ってるでしょうが」 「……知らない」 「じゃあ、知って」  「そんな必要ないし」 「ほんと、あんたって、機嫌をそこねるのがうまいよね」 と、龍ヶ崎。

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