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第63話 昔のドラマじゃないんだから、給湯室で××はないだろ……

龍ヶ崎に手首をつかまれて、 「痛っ!」 どんっ、と食器棚に胸元から体を押さえつけられた。 龍ヶ崎が背中におおいかぶさり、体を密着してきた。 「おとなしくお茶くみしてたらいいんだよ、あんたは」 と、龍ヶ崎がきつい口調で言ってきた。 「おまえに言われなくてもやってんだろうがっ」 振り向こうとしたら、頭をおさえられた。 やることは、やってるのに。 何が気にいらないのか、わからない。 まぁ、そもそもここに(風紀委員室)に来たのが、お気にめさないのは、知ってるけど。 「おとなしくはないがな」  と、龍ヶ崎。 「周りがうるさいだけだ」 「あんな小人数で悪目立ちして?」 と、鼻先で笑われた。 「……オレのせいじゃない」 と、小声で答えた。 騒いでたのは修ちゃんだけ。 オレは合わせていただけだし。 「和孝(風紀委員長)を満足させたり、修一郎(初等部の友達)とバグしたり、瑛翔(永島)に興味持たれたり、高槻になつかれて?」 と、龍ヶ崎。 「事実は修ちゃんとのバグだけじゃん。ほかのは龍ヶ崎の主観だろうがっ」 「ほんの1時間あまりで、周囲の人間をたらしこんで楽しい?」 「そんなことしてない」 と、オレ。 「……無意識でやってんだよね」 耳元で言われた。 後ろにいる龍ヶ崎を見ようとしたら、 「動かないで」 と、耳朶を食まれた。 「……りゅう、がっ崎」 「顔見たら、ひどいことするかもしれない」 「え?」 龍ヶ崎の唇がついばむようにおりてくる。 耳の下。 頬。 顎骨の付け根。 首筋。 チリっとした痛み。 「ちょ、ちょっと。あと、つけんなっ」 と、覚えのある感覚にあせった。 「すぐ消える」 と、龍ヶ崎。 「ほんとに?」 「2、3日かな」 「すぐじゃないじゃんっ!」 オレが振り向いたら、 「忠告したのに」 と、龍ヶ崎が少し困ったような顔を見せてから、まぶたにキスをしてきた。 くすぐったさに、目を閉じると、羽のようなふわりとするキスを両まぶたにされた。 そっと唇がはなれると、 「お茶もってきてね」 と、龍ヶ崎は給湯室を出ていった。

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