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第65話 ちょいと挙動不審だよ、高槻くん
「た~かつきくん、暑い?」
と、オレ。
「は?」
「顔、赤いけど」
「……大丈夫です。ちょっと驚いただけです」
「ほんとに?」
高槻くんの顔を覗きこもうと近づいたら、彼が体を後ろにひいた。
「何ですか?」
と、高槻くん。
「熱あるかな、と思って」
「ないです。だから近づかないで」
「オレのこと嫌い?」
「はあ?」
「そばに来られるの、嫌そうだから」
と、オレ。
高槻くんが眉間にしわをよせた。
そして、大きくため息をついてから、
「…………何言ってるんですか。あなたこそ、どうしたんですか、それ?」
と、高槻くんに首筋をさわられた。
くすぐったくて、首が逃げてしまう。
それ、って。
さっき、給湯室で龍ヶ崎につけられたあとだ。
「さっきはなかったですね」
と、高槻くん。
見て見ぬふりをしろよ。
ふつうは気づいても、スルーするっしょ?
「虫さされ」
と、オレ。
高槻くんに指先をこちょこちょと動かされ、首をすくめたら、
「うあっ」
と、高槻くんが小さく言ったと同時に指が離れていった。
「なに?」
と、オレ。
「別になんでもありません」
と、早口な高槻くん。
なんでもない、という反応じゃないけど。
挙動不審な高槻くんを、じっとみてみた。
中等部の生徒会にいたんだよなぁ。
いっこ下の補佐たちの1人だったんだ。
補佐って5、6人がいたと思うから、覚えてなかったのは許して下さいねぇ。
だってオレ、補佐の子たちと、あんまり接点なかったし。
補佐って、主に生徒会長と副会長の仕事の手伝いしてたからなぁ。
書記のオレはもっぱら会議の時にホワイトボードに、書き込みしてた覚えしかない。
それをパソコンに入力してたのは、副会長だったしなぁ。
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