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第68話 記憶力がよいと言ってくれ、永島さん
修ちゃんと高槻くんが帰ってしまってから、オレも仕事を終える作業をした。
書類をファイリングした物を、カギ付きのスチール製の整理棚に片付けた。
終了したら、龍ヶ崎が整理棚のカギをかけた。
オレは自分の机に戻って、カバンを持ち、
「それじゃあ、お先に。お疲れ様」
と、歩きだしたら、
「待て」
と、委員長。
無視して歩いたら、
「ちょっ、桜井っ! 待てよっ」
犬じゃないんだから『待て』なんてしない。
「明日も来るよな?」
と、委員長。
「用事がなかったら」
と、オレ。
そんなことで、足を止められたのか。
心底、つまらないよ、委員長様。
「飯……一緒に食わない?」
と、委員長。
「はあ?」
「いちよう風紀委員になったわけだし、親睦ふかめるために」
「委員長と?」
「あぁ」
「やだ」
「ああ?」
「女みたいな顔して気持ち悪い、って6才のオレに言ったの、まだ覚えてるんだけど」
「……根にもつタイプなんだ」
と、ぼそりと永島。
「その後、ボコボコにおまえに殴られたけどな。そのせいでいじめにもあったわ」
と、委員長。
「そのいじめをやめさせたのも、オレだったじゃん」
「ぐっ」
と、委員長。
「入ったんだから委員会の仕事はするけど、馴れ合う気はないから。特にかずくんとは。それにオレらがつるんでると、あいつがうるさくなるからね」
と、オレ。
重厚な扉を開けて外に出た。
扉が閉まる前に、
「あいつって誰?」
と、問う龍ヶ崎の声に、
「あの面倒くせぇ生徒会長」
と、委員長が答えたのが聞こえた。
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