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第16話
「俺の、超超超個人的な見解からいうと、受けの名前ってちょっと女の子っぽいのが可愛いと思うんです。実際、商業BLでも多いです。そんな名前、普通男子につけるか?ってツッコミたくなるくらいユニセックスな名前。で、攻めはえっちの時に受けを愛称で呼ぶっていうのもテッパンです。いつもは苗字で呼んでるくせに、いざその時になると甘い声で下の名前を囁くんです。苗字か~ら~の~、下の名前呼び。これ、めちゃ萌えます。超いいっす! サイコーです! いつも、向井とか由幸って呼ぶくせに、ベッドの中では『ゆき』って呼ぶんすよ! やべえ! 萌える!」
「か、語るねえ~……」
己の語りに萌えすぎたのか、奏はぶるっと身悶えして由幸を見た。その唇はほんのり弧を描いている。
そのままじっとこちらを見つめられ続け、なんとも背中がこそばゆいような気分になった。
「ゆき」
奏が低い声で由幸を呼んだ。その微笑む顔があまりにも綺麗で、同性ながらうっかりドキンと心臓が飛び跳ねた。ドクドクドクと胸の鼓動が強くなり、おいおい俺どうしたよ、とセルフツッコミが止まらない。
「どうでした? ドキッとしました?」
「えっ、うん。あー、したした。ヤバい。すごくどきどきした」
「え、マジで? やったあ!」
ヤバい。すっかり奏の語りに毒されて、脳がBL脳に変化し始めている……。
でなければ、同じ男である奏にこんなにどきどきするはずがない。このままだと自分もすっかり腐の道に目覚めてしまいそうだ。
しかし受け向きの名前って何だ、と改めて考えてみると、ふと、ある疑問が湧き上がった。
「ねえ、『由幸』より『奏』のほうが受けっぽくない?」
見る見る奏の口がへの字に曲がっていった。
「バレました? そうなんすよ。実は向井さんと俺じゃあ、俺、負けてるんですよ」
「ははっ。負けって何?受けだと何か負けてるの?」
「だって俺、BLの漫画なら絶対に攻めになりたいですもん。可愛い受けを攻めて攻めて攻めまりたいです。生まれ変わったらBL漫画のイケメン攻めとして生まれてきたいです」
まさか漫画の登場人物に生まれ変わりたいとは。
由幸も、漫画の主人公みたいになりたいとは思ったことはあるが、まさか生まれ変わりたいだなんて。単純にもう、すごい、としか言い様がなかった。
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