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第22話
男同士でアクロバティックな体位?
一生懸命考えてみるが、男同士でアクロバティックな体位ができるのだろうか。体の構造上、突っ込まれる場所はやっぱあそこで、そうなると、こう、後ろから……。
悶々と由幸が少ない知識を巡らせていると、いつの間にか奏は窓辺にたたずんでいた。
「やっべえ……。東京タワーだ……」
部屋の窓からは遠くに赤いタワーを見ることができる。由幸も初めて部屋からそれを見たときは、やはりちょっと感動した。
都会の街明かりは蛍の大群みたいに夜中光り続け、夜空をほのかに明るく照らす。遠くに見える東京タワーは女王のように凜とそびえ立っていた。
しかし毎日見ているとその光景は日常の風景として馴染んでいく。たまにタワーのライティングが変わると、今日は何かの日だったっけくらいの関心しか持てなくなっていた。
「向井さん! セックスしよっ!」
「はいぃっ!?」
くるりと振り返り、爽やかに奏は笑って言った。大昔に流行ったらしいトレンディドラマみたいなセリフに、由幸はうっかり動揺してしまった。
セックスって言ったよな──。
さっきまで脳内展開されていたアクロバティックな体位の攻めが、奏の姿で頭に浮かぶ。
「ええっ……。えー……」
条件反射みたいにお尻の筋肉がぎゅううっと引き締まった。
「東京タワーの見える窓での釘刺しえっちとか、夢みたいじゃないっすか」
「えっ! こわっ!」
釘とかどんなプレイだよ! 脳内で丑の刻参りよろしく、手に五寸釘を持つ奏が笑う。
「こわっじゃないっすよ~! ほらほら~~」
ぐいっと腕を引っ張られ窓ガラスへと押しつけられる。ぴたりと背後から奏が覆い被さってきた。
「向井さん。東京タワー、きれいっすね」
「へあっ? ああ、うん」
「背後から奏の極太の釘を激しく打ちつけられ、由幸はガラスに白い飛沫を散らした──」
「え、また白い飛沫?」
ガラスに映る奏は、子供のように期待でいっぱいの目をわくわくと輝かせている。
「あはっ! これ何ごっこ?」
「あっ、スーパー攻めごっこです!」
「スーパー攻め?」
「はいっ! 超ハイスペックスパダリ攻めです。俺、BLだったらスーパー攻めになりたいんで」
「ふっ……、あははっ! 何それ~!」
全然意味はわからないが、ついついおかしくて笑ってしまう。見た目は凜とした王子さまみたいなのに中身はとんでもなくぶっ飛んでいて、そのギャップがおかしくて大好きだ。
くすくすと笑いながら振り向くと至近距離で視線がぶつかった。思ったよりも近くにあった奏の顔に、どきっと胸が鳴った。
「向井さん、ガラスに手、ついて」
「あ、はい」
由幸は奏に言われた通りにガラス窓に両手ついた。
「おおっ?」
奏が由幸の腰を両手で掴み引き寄せた。
「綺麗だよ。後ろから俺に釘刺しにされて、まるで昆虫標本の蝶のようだ……」
「えっ? 蝶? 何がっ? てか、それってさあ」
「はい。BLで読んだやつです。スーパー攻めの言葉攻めっす」
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