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第32話

「八千代くんはさ、俺に話してもつまらないとか思わない? その、俺ももっとBL勉強してみようかな」  そうしたら奏ももっと嬉しいだろうと由幸は提案してみた。 「や、いいです」 「へ?」 「俺、向井さんにそういうの求めてないんで」 「なんで?」  もっと仲良くなりたいと差し伸べた手を奏にばっさりはたき落とされた。 「もしも向井さんが俺みたいにBLに目覚めたとしますよね」 「うん……」 「萌えポイントってほんと人様々なんですよ。自分には萌えるシチュが相手には地雷だったり。向井さんの地雷が俺の萌えだったらこんなふうに気軽に語れなくなるじゃないですか。向井さんの地雷踏まないように気を使いながら喋ったって全然楽しくないし。だから向井さんは今のままでいいです。適当に俺の話、聞き流してくれるだけで十分です」 「そうなの?」 「そうです。俺は今の向井さんが好きです」  好きと言われた。もちろん深い意味なんてないのはわかっている。でも。 「俺も、今の奏くんが、好き」  まるで告白しているみたいで、おかしくて笑った。横顔に奏の視線を感じ、振り返る。 「向井さん。ほんと天然の受けですね。そんなふうに笑われたら、俺、好きになっちゃうじゃないですか」  冗談ぽく言う奏の目元がほんのり赤い。  なんだ、これ。そんな顔されたら、もう勘違いしていまいそうだ。

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