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第78話
「好き、スキスキスキ! 奏くん、好きだよ……」
パンツ一枚とっても奏への愛おしさがこみ上げる。
「こんな受けパンツでも好きですか?」
由幸にきつく抱きしめられながら、奏は少し苦しそうに言った。
「受けパンツ?」
由幸は抱きしめる腕を緩め奏の顔を見た。
「はい……この間、美歌と買い物に行ったんです。つきあって入った下着屋のメンズコーナーで、俺、このパンツに一目惚れしちゃって。可愛い高校生受に履いてて欲しいな、って思ったらつい買っちゃいました」
奏は照れくさそうに笑った。
「美歌ちゃんと下着屋さんに行くんだ?仲良いね」
「そっすかね。てか、美歌のやつ、誰に見せるんだか、めっちゃエロい黒の総レースのブラとパンツ、買ってましたけど」
「うん。その情報いらないから。やめて」
うっかり美歌の下着姿を思い浮かべそうになり、由幸は顔をしかめた。
「あ~っ! ほんと俺、なんでこんなパンツ履いてるんだろ!? やっぱかっこいい攻めは、かっこいい攻めっぽいパンツ履いてないと、キまらないっすよね……」
由幸には奏がどんな下着を身につけようと、大した問題ではなかった。しかしかっこいい攻めの履くパンツとはいったい。
「ねえ、かっこいい攻めのパンツってどんなの?」
パンツはパンツ。
トランクスやボクサーなどいくつか種類はあるが、攻めが履くべきパンツとはいったいどんなものだろうか。
「う~ん、どんなのだろう……。黒ビキニとか?」
「……ぶはっ!!」
奏がピチピチの黒いビキニを身につけている姿を想像して、由幸は吹き出して笑った。
「あはっ! あははっ! 八千代くん、似合わないから! ていうかそれ、ボディービルダーじゃん! 八千代くんの中のかっこいい攻めって、もしかして筋肉ムキムキでしょ!?」
おかしすぎて由幸は腹を抱えた。
「そんな笑わなくても……。ていうか、ゆきちゃんはどんなパンツ履いてるんですか?」
奏の手が由幸のベルトにかかった。
奏は興奮を隠しきれない手つきで、すばやく由幸のズボンを脚から引き抜いた。
「あっ。」
由幸は今日、ダークグレーのボクサーパンツを履いていた。そこらのスーパーの衣料品売り場でだって買うことの出来る、大手肌着メーカーの、いたって普通のボクサーパンツ。
しかしそのフロントが、先ほど奏の手により扱き上げられたことで、ぐっしょりと濡れていた。グレーはすっかり黒色へと変色している。
「あはっ」
気まずさから由幸は苦笑いを漏らした。
「ひいた?」
奏の視線からそこを隠すように、自然と内股になっていく。
「いや……、ひいてないです。ていうか、完璧です!!」
奏は息を荒げて言った。
「ゆきちゃん、これ、まじ、完璧な受けパンです! グレーって濡れるとすぐ色が変わるじゃないですか! それってやっぱ、BLでもよく見るやつで……! 色変わっちゃうと濡れてるのはっきり分かって、受けとしてはめっちゃ恥ずかしいじゃないですか?どんだけ表面では抵抗してても、実際はめっちゃ感じてるわけだから。すごい……、すごい……、こんなのまじでお目にかかれるなんて……! サイコーっす!まじ、最の高です!!」
やっぱり奏は長々と語り、しまいに由幸に向けて「受け的には濡れてるの分かって、やっぱ恥ずかしいですか?」と聞いてきた。
「ちょっと……落ち着いて? 恥ずかしいといえば少し恥ずかしいけどさ。でも八千代くんだって……、濡れてるみたいだよ?」
パンツ一枚だけを身につけた男が二人。
由幸がボクサーの前を変色させているのと同じように、奏も興奮のあまり、キュートなパンツのフロント部分が色濃くなっていた。
「あっ!ほんとだ」
奏は自分の下着を見つめ、今気がついたとばかりに驚いている。
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