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第93話
14.
奏は由幸の全身をキスで確かめていく。胸、わき腹、内腿の柔い場所、それこそ足のつま先の指一つ一つまで。ひとつひとつ丁寧なキスが降り注ぐ。
言葉は一切なく、奏と由幸の漏らす息がエアコンのきいた部屋を熱くさせていく。
「はぁ……、は、はぁ……」
キスだけで、由幸のそこは腹に反り返ってしまった。先端からとろとろと雫が滴り続け、小さな水溜まりみたいになっている。
奏が身につけたものを脱ごうと上体を上げた。その瞬間、暗くなった部屋を雷光が照らした。
光が白く奏の身体を浮かび上がらせる。
外は土砂降り。
遠くに稲妻が見える。
窓の外は嵐の様相なのに、この部屋は分厚いガラスに隔たれて、外の音はこもって遠くに聞こえている。
由幸は稲妻を見た。まるで映画のスクリーンか、テレビの画面を見ているよう。
現実の出来事は全て、由幸の部屋の中だけで起きているようだった。
しっとりとした奏の肌。興奮に少し汗ばんでいた。その若い肌に、由幸はぴたりと手のひらを吸いつかせた。
「んっ……」
由幸の手にすら感じているらしい奏。その中心は雄々しく天を向いていた。
「ここに座って……」
奏がベッドの上にあぐらをかき、膝の上へ由幸を招いた。腕を引かれ身体を起こすと、由幸はゆっくりと奏のあぐらの上へ座った。
「あっ……、はぁ……」
奏の両手が由幸と奏のを纏めて握る。ゆっくりと上下に纏めて扱かれて、初めて経験する快感に由幸は背を仰け反らせた。
そのまま倒れてしまいそうで、慌てて奏の肩を掴む。腕に奏を抱き込むと、由幸は奏の肩へ顔を埋めた。
耳の奥へ直に奏の息づかいが届いた。ハアハアと荒い息が由幸の身体にかかる。
その余裕のなさを愛しく思う。
「俺……、いっかい、いってもいいすか……」
息の合間に苦しげな声で奏は懇願した。
「うん……、いいよ」
これほど昂ぶっているのなら、一回出さなければ辛いのは由幸にもわかる。自身に感じる奏の熱は、ありえないほどに熱くて火傷しそうなほどだ。
由幸も手を伸ばした。奏の手に添えるように自分の手を重ねる。
自然と唇同士が引き寄せ合い、深く口づけながら一緒に手を動かした。
「んっ……」
合わせる口の中で奏が低く呻き、重ねた手にどろりと粘度の高い液体がかかった。ゆっくりと唇を離し、奏を見る。
眉根をよせ、目を眇め、男くさい顔をしていた。その瞳の中の熱はまだ退いていない。
「すいません……」
ひとつ謝り、奏は由幸をベッドに磔にした。
「これ」
いつの間にか準備されていた潤滑剤のチューブ。奏はふたを取ると、中身を手のひらに絞り出した。
由幸の割れ目をぬめる指が辿る。そして指先は由幸の窄まりにぴたりとあてられた。
「痛かったら、」
奏が言うより早く、由幸は声を出した。
「痛くてもいいから」
痛くてもなんでもいい。とにかく奏を受け容れたい。
「……はい」
奏の指が戸惑いながら押し込んできた。
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