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第6話
「――で、どこで出会ったんだ? 答えるまで帰さねーぞ、知矢」
ファストフード店の窓際の席に座り、裕二が鼻息も荒く聞いてくる。
「……言いたくない」
本当のところは『言えない』のだが。
「なんで? 別におまえの彼女とろうとか考えてなんかないぞ、俺は」
「それは、分かってるけど……」
「じゃせめて年下か同い年か年上か、教えて」
「……年上」
「あー。やっぱりな。知矢は年上にかわいいって思われてモテるタイプだと思ってた。くそー、うらやましいぜっ」
裕二が大げさに天を仰ぎ、シェイクを音を立ててすする。
「で、美人? スタイルはいい?」
続けて聞いてくる。
「……それは、ものすごく美人……スタイルも抜群……」
そうお兄ちゃんを形容するのならクールビューティという言葉が一番ぴったりくる。
「ほうほう。で、性格は?」
「すごくやさしいけど、怒ると怖い、かな」
相手が血の繋がった兄なので、勿論大っぴらには言えないが、知矢とて恋人を自慢したい気持ちは大いにあるので、ついつい裕二にのせられて質問に答えてしまう。
「もう、ちゅーした?」
「う――え!? あ?」
突然質問が際どいものになり、知矢は焦った。
裕二をにらむと、かまぼこのような目でこちらを見ている。
「ふーん。うらやましいのう。それじゃさ――」
「も、もういいだろ。充分答えただろ」
「まだまだ……って、あれ?」
不意に裕二が窓の外を見て頓狂な声を上げる。
「え?」
「あれ、あそこにいるの、おまえの兄貴じゃね?」
「……え?」
裕二の視線を追いかけて、知矢もまた窓の外へ視線を投じると、そこには確かに愛する兄の姿があった。
大勢の人混みの中にあってもその芸能人のようなオーラを放つ美貌は一際目立つ。
しかし。
「なあ、一緒にいる美人、あれおまえの兄貴の彼女さん?」
そう、兄は一人ではなかった。隣にいわゆる清楚系の美女がいたのだ。
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