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晶と朱鳥
今日は付き合い始めて最初のデート──
実は付き合い始めてから結構日が経っていた。学校内でもいつも一緒……講義が終わってからも殆どを一緒に過ごしている。でもそれは二人きりではなく誰かしらも一緒で、とりわけ輝樹も含めて三人でいることが殆どだった。
「今日はデート……だよな? なんでそれで来たの?」
「……別にいいだろ。この方が自然だ」
郁人は待ち合わせの場所に現れた晶の姿を見てちょっと戸惑う。学校ではあまりに素っ気ない晶でも、こうやって学校を離れ二人きりのデートとなれば可愛い表情を垣間見れると思って楽しみにしていたのに、郁人は晶のその姿に内心残念に思った。
目の前に立っているのは晶であって晶ではない。
一際目立つ容姿端麗なその姿。周りの男達が揃いも揃って振り返る程の美少女の姿に郁人は困惑しながら肩を抱いた。
「朱鳥 で来るならそう言えよ…… なに? そういう気分なの?」
「うん……そんなもん、かな」
朱鳥というのは晶がする女装の時の名。郁人にとっては初恋の相手、一目惚れした女の子だった。
一目惚れしたぐらいには朱鳥の事も好きなのには変わりない。でもこれは晶の偽りの姿。何故晶がデートにこの姿で来たのか郁人にはわからなかった。
「ふうん、そういうもん? まあいいや。なら今日は朱鳥って呼べばいい?」
晶の耳元で小さな声でそう囁くと「……ああ、そうしてくれ」と素っ気なく返事をされた。
郁人は晶がしたいようにすれば良いと思ってそれ以上は何も聞かなかった。郁人にとってみればどんな姿であろうと晶には変わりない。女の子の姿の晶も誰もが認める美人だし、男の姿の晶だってそこらの野郎達より飛び抜けてカッコいいのもわかっていた。
だから晶が自分を偽り、こうやって女の姿でいる意味がよくわからない。気分だと言われてしまえば、そうなのか……と納得はするものの、目立つこの姿で声色が男となれば余計に目立つと思うのか、晶の口数がいつにも増して少ないのが面白くなかった。
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