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デート

「とりあえず腹減ったし飯食いに行くか」 まわりを気にする晶のために、郁人は気を利かせ個室のあるレストランを選び朱鳥をエスコートした。それに折角のデートなのに碌に喋らずツンと澄ました朱鳥じゃちっとも面白くない。なんならその女装だって今すぐに解除して欲しいくらいだけど、晶の気持ちを思って郁人はそれは言わないようにしていた。 「なんか本当にデートみたいだな……」 席に着くなり、頬を赤らめ晶がそう言って笑う。何を今更! デートだろうが! と少しムッとするものの、晶のその表情に郁人は思わず言葉を飲み込んだ。 「……やっとちゃんと喋れるな」 「うん……」 恋人同士になったところでいつもと変わらずな晶の態度に、正直郁人は物足りなさを感じていた。でもこうやって二人きりの時に見せてくれる晶の特別な表情を見て、やっぱり幸せだと思い直す。 二人きりで楽しく食事をし、次はどこに行こうかと晶に言われ、郁人は既に決めてあったデートプランを話し始めた。 「まあプランって言っても大したことないんだけど、これからちょっと買い物ぶらぶらしてさ、映画でもみてから俺の部屋……なんてのはどう?」 下心がないわけではなく、もちろん郁人はそのつもりで晶を誘う。 今までは校内のトイレや人気の無い物陰などで数回キスはしていたものの、最初にホテルでお試しでセックスをした時以来そういった行為はしていなかった。 「流石にそろそろ……したいんだけど、ダメかな?」 肩を抱き、そっと囁くように郁人は聞いた。あまりにもストレートにそう言われ、晶は思わずこくりと頷いてしまう。晶だってそれを期待してなかったわけじゃない。只々自信がないばかりに、気持ちとは反比例した素っ気ない態度を取ってしまっていただけだった。 郁人は自ら行きつけのショップへ足を運ぶ。ここには晶も一緒に買い物に来たことがあった。勿論店員とも顔見知り。晶は知った人物のいる店にこの姿で顔を出すのは気が引けてしまうと言って拒むものの、郁人に「大丈夫」だと言われてしまい渋々買い物に付き合った。そこでも郁人の言う通り、店員は晶にはちっとも気がつく様子を見せず、寧ろ郁人に「新しい彼女は飛び抜けて可愛いな!」と興奮しきりにそう伝え、晶が恥ずかしくなってしまう程 郁人は朱鳥を自慢していた。

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