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訪問者

後頭部を優しく支えられながらキスを続ける。 決して力が強いわけじゃないのに、その手に抗うことが出来ない。絡まる舌先が執拗に口内を舐り僅かな性感帯を探り当てる。心地よい快感の痺れが腰の辺りまで降りていき、晶はもうどうしようもなく力が抜けていってしまった── 「晶……可愛い」 恍惚な表情で郁人はそう呟き、そのままゆっくりと晶を押し倒す。 郁人の手が晶の服の中へと滑り込み、直接肌に触った。 「……んっ」 ビクッと思わず体が強張る。これは恐怖心からではなく強く感じる快感に晶は驚いただけだった。 「嫌……?」 一瞬不安そうな顔を見せた郁人が晶の顔を覗き込んだ。それを見た晶はクスッと笑い「嫌じゃねえよ。遠慮しなくていいから……抱いて」と答えた。 あの日から改めて郁人に抱かれる── 半ばヤケになっていたあの時とは違い、お互いを意識して体を交える事にこんなにも緊張するのかと晶は驚く。でもどんなに自信がなくても、更にこんな男の姿だろうと、郁人は自分を求めてくれるのだとわかり安心した。 郁人の手が晶の下半身に触れるか触れないかのタイミングで、玄関のチャイムが鳴った。 「………… 」 「……郁人?」 ピンポーンと間の抜けた音が部屋に響く。郁人は明らかにムッとした表情を見せるもそれを無視して行為を続ける。晶に至ってはその玄関の向こう側が気になってしまい、もうそんな気分ではなくなってしまった。 「晶……こっち見ろよ」 「いや……誰か来てるし」 呼び出しを無視しても、それはしつこく何度も鳴った。晶は郁人の体から離れると、サッと身なりを整える。そのうちにドアをドンドンと叩く音と共に「いるんだろ? 開けてよ〜。なぁ……」と情けない輝樹の声が廊下から響いた。 「は? 輝樹かよ! なんなの? ムカつく!」 郁人はぷりぷりと怒りながら、それでもドアを開けようとはしない。晶はうるさい輝樹が近所迷惑になりそうだったから、郁人を横目にドアに向かった。 「いいよ、ほっとけ。無視だ無視!」 「いや、でもうるせえし、あれ酔っ払ってるよ? 俺は構わねえし、出てやろうよ……」 フンっとそっぽを向く郁人を無視し、晶が玄関のドアを開ける。開けるなり確認もせずに飛び込んできた輝樹に晶は抱きつかれてしまった。 「え? どうした? 泣いてんのか?」 輝樹に抱きつかれながらその顔を見て驚くと、逆に輝樹に驚かれてしまった。 「あれ? 晶じゃん! え? なんだよ、俺がしんどい時にお前ら二人で遊んでたのかよー、ずりいぞ! また俺だけ除け者!」 「除け者とか言ってんな! てか晶から離れろよ! お前何やってんの?」 「はー? そんなに怒んなくてもいいいじゃん! 慰めてよ、俺もうダメ……ねえ、ほんと。もうヤダ……」 輝樹はメソメソと泣きながらそのまま床に突っ伏してしまった。

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