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恋は突然に。~秋広の場合~

 昼間言った通り時間ぴったりに夏樹くんはお店に来たが昼間に比べ緊張して落ち着かなくそわそわしていた。 …どうしたんだろうか?  そんな風に思いつつ作ったご飯とオレンジジュースを出す。 「今日は陸人のリクエストでハンバーグだったんだ。夏樹くんも好き?」 「はい!りっくんらしいですね」  思い出したのかふふっと笑いいつもの夏樹くんが見えた 「良かった、朝、いつもと違うからなにかあったのか心配したよ。冷めちゃうからほら食べて」  いただきますと手を合わせて食べ始めた。 「いつ食べても秋広さんの料理美味しいです」 「ありがとう。あと残り物だけどクッキー焼いたから帰りあげるね」  夏樹くんは食べ終えてまた口を紡いだ。なにか言いたそうではあるがそこを無理に問うなんて思わないがいつも素直で明るい子がここまで静かだと調子が狂い年頃の子の接し方がわからなくて困った。 「あ、あの!秋広さんにつ、伝えたいことがあって!」 「え、なんだろう・・・ご飯ちょっとしょっぱかった?」  違います!それは本当においしかったですと慌てて訂正した 「えーっと・・・す、すっ」 「秋」  夏樹くんの言葉にかぶせるように弟・拓海(たくみ)の声がした。  拓海は家から直結するドアを開けて顔出した。少し目に掛かる前髪から覗かせた瞳で尋ねてきた。 「あ、夏樹いたんだ、わりぃーな邪魔して。秋、頼みがあるんだよ」  この一瞬で夏樹くんはまた黙って下を向いた。 「わかったよ。それで夏樹くん、さっきなんて言おうしたの?」  夏樹くんはその問いかけにハッとしたようにそして何度目かの顔を赤くした。 「あ・・・い、いえ何でもないです。また来ます、さよなら!」  席から立ちあがりドア付近で転びかけるが立て直してからドアをあけて去っていった。 「なあ秋、夏樹上着忘れてるって」  届けてくると弟に伝えて渡すと言っていたクッキーと本人の上着をもって夏樹くんを探した。  見慣れた姿を見つけ名前を呼ぶと夏樹くんの歩みは止まった。 「間に合った~!」  肩に触れ振り向かせたとき、ぎょっとした。なぜなら夏樹くんの顔に雫が落ちていた。そう涙だった。

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