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恋は突然に。~秋広の場合~

 拓海が働いている美容室「LITTLE(リトル)」に着いた。店のドア開けるとチリンチリーンと音鳴らしそれに気づいた店員さんに挨拶し待合室に案内される。 「陸人くーん」  声を発して陸人の元へ近づいてきたこの人物は、この店の店長・小鹿麻耶(こじかまや)さんだった。この人は俺と似ていて小さくて可愛いものが大好きだ。昼・夜共々月下美人の常連さんでもある。 「麻耶ちゃん」  陸人が麻耶さんのことをちゃん付けなのはそのように呼んでと言ったからだ。 「秋広だけって聞いてたけど陸人くんが来てくれたならわたし頑張っちゃう!」 「店長、今日は様子見に来ただけでしょ。陸、兄貴やってる間暇だろうから麻耶さんに髪の毛整えてもらいな」  陸人くんのことはまかせてと張り切っている麻耶さんにお願いし俺は拓海とともに別部屋へ入った。 「秋、髪伸びたね、うーん髪型どんな感じしようか、秋、希望ある?」 「拓の腕を信じてるのでお任せします」  そういうと少し照れたように鼻の先端を掻いた。拓海の癖で親は違えど16年一緒にいるのでお互いの癖は把握済みだ。そして拓海の前髪を伸ばしている理由も知っていたが、拓海はおじさんに似て顔は整っている方なので隠す必要はないのにと思うがそこは兄として触れないのが筋ってもんだ。  準備を終え、拓海はカットに取り掛かり言った。 「なあ、この間夏樹となんかあった?」 「・・・あったようなないような。まあ気にすんな」  なんだよそれ、と少し呆れたような声が後ろからした。未だにこの間のことを気にしているのかと思うが、最近の俺の様子が変なのに気づいて弟なりに心配しているからだろう。 「・・・知り合いの話なんだけど年下の子から告白されたんだって。でも一回りくらい離れてるから答えようにもそれが壁となってるんだ。告白抜きにしてこっちは普通に接しようとするとその子が逃げるんだ。そうされたらやっぱりあの泣きながら告白してきたのは違うのかな、やっぱり年上をからかってたり何かの罰ゲームでとか思うんだけど、その子の泣いた顔や笑った顔、話し声、しぐさが愛おしく思う。会った頃から思ってた・・・って知り合いが言ってたんだよね」  力なくははっと誤魔化すように笑うと何故か拓に頭を撫でられた。 「秋、なら知り合いに伝えて。それを好きだって言うんだって」

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