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恋は突然に。~秋広の場合~

 自分のことを知り合いに例えて言ってしまったが、勘のいい拓にはバレているに違いない。でもそれを問い詰めることもしないあたり本当に優しくてよくできた弟だ。 「秋?聞こえてないならもう一度言おうか?」  鏡越しに見えた拓の表情はいたずらっ子の顔だった。こいつ、わかってる。 「聞こえた。ちゃんと伝えてるよ」 一旦止めていた手をまた再開しあとは他愛もない話をしカットとセットが終わった。 「俺の技術というよりモデルがいい。流石、俺の兄貴」  暫くめんどくさく肩まで伸ばし切っていた髪の毛も拓によって短髪になり襟足部分は借り上げられ前髪はサイドに流しセットされていた。 「出来はどうかしら?もう少しで陸人くん夢の中へ旅立ちそうよ。・・・なるほど、モデルに合わせてこのイメージにしたのね。秋広の知的さが更に出てる。素敵よ」 「ありがとうございます」  あんたの弟飲み込み早くて助かるわ~と言いながら終始機嫌がいい麻耶さんをよそに拓海は自分のペースを崩さず片付けに入る。 「秋、今日21時頃なるから帰ったら店手伝うわ」 「うん、わかった。気を付けて帰ってこいよ」 部屋を出てソファーでうとうとしていた陸に声かけると拓と同じこと言う。流石兄弟。 「陸、歩いて帰れるか?」 「うん、お腹すいた~」  んん~自分のペースを崩さないしそして可愛いすぎるぞ、弟よ。  時刻を確認するのに携帯を取り出しついでにメッセージも確認する。 「父さんたち帰ってきてるって。15時だし買い物して帰ろうか」 「ちょっと待って。髪型のイメージとしてSNSに乗せたいから写真いいかしら?」  拓がやってくれた記念も兼ねて断る理由もないため了承をした。場所は店の前で撮るとのことだった為、移動する。 「まずは陸人くんね。これは個人的にほしいのよ」  そんなことだろうとは思っていたが、陸人も髪を弄ってもらっていたのでゆるふわに巻かれていた。  陸人を見てると夏樹くんを思い出す。あー夏樹くんを暫く見ていないな。今何してるのかな。声聞きたいしあの時の夏樹くん可愛かったな。夏樹くんに会いたい。 「秋、その会いたいと願ってた人偶然にもここにいるぞ」  反射的にその姿を探すと顔を真っ赤にしたその本人が拓の横にいた。

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