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恋は突然に。~秋広の場合~

 いつも吸う煙草は今日はまずく感じた。そろそろ辞め時か?  今日はというか最近頭の中は夏樹くんのことばかりだ。元々、近所に引っ越してきて一人暮らしていると聞いて年頃の男の子が一人で大丈夫か心配で気になっていたが、ここまで占領されるとなると結果は解っている。俺もそれなりの恋愛はしてきたつもりだがここまで一人の子の行動や言動に心が揺さぶられたことはないし今まで本気ではなかった。確信はなかったが夏樹くんのことは好きでいた。あの告白を機に隠れていた感情が表に出てあの時の表情に惚れ、確信を得た。俺もあの子のこと好きなんだな・・・ 「後は伝えるのと夏樹くん次第か・・・」 吸い終わった煙草を灰皿に入れて時刻を確認し開店時間になり店の鍵を開けた。 拓が帰ってきて店を手伝ってもらい、いつも通り常連客のみになった10時半頃、父さんが店に顔を出した。 「秋、夏樹くん帰るっていうから遅いし送ってくるな」  泊まっていくと勝手に思っていたが、やっぱり帰るのか・・・ 「父さん、夏樹は兄貴が送るって。店はもう俺だけで充分だし行って来いよ」  なら、任せたと車の鍵を投げ父さんは家に引っ込んだ。  また拓に気を遣わせたなと思いつつ、店から出て車庫へ行き、家の前で車を止めると夏樹くんと陸が出てきた。  一瞬、運転席に俺が乗っていることに驚いた夏樹くんを見て少しがっかりした。  夏樹くんのことだから助手席に乗らない気がしたのでドアをあけて少し強引に乗ってという。 「お願いします・・・」 「なっちゃんまたね~また内緒話しようね!」  なんだ、内緒話って気になる。  お互いてを振ったのを確認して発進した。  着くまでの話はしなかった。いや、できなかった。夏樹くんはずっと窓の過ぎていく景色を見ていた。無理に話しかけないほうがいいかもしれないと思ったからだ。  家の前に着いたとき、今日初めて夏樹くんから話しかけられ目線があった。 「・・・うちに寄っていきませんか?」  

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