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恋は突然に。~夏樹の場合~
いつもとは違う甘い声が耳元でする。それがゆらゆらと波打つように頭の中を支配した。ぶわっと全身が熱くなるのがわかる。
「はは。体温が上がった」
「い、意地悪だ」
「まあいいか、夏樹くん見てれば伝わるし」
顔に出てるのか考えたところで自分では分からないのでやっぱり恥ずかしい。そしてこの人の笑顔には弱く向けられるとドキドキし上手く顔が見れなくなる。自分にとって初めての恋でここまで執着したのはない。一目惚れであったが本当は気持ちなんて伝えるつもりはなかったし近くで見ていればそれで満足だったが関わっていく内に振られてもいいから告白しようと決意した。どうせ振られると思っていた、何せ同性だから。
いざ告白しようと決意したが本人目の前にしたらしり込みしタイミングも悪くて言えなかった。その後追いかけてくれたことで気持ちが溢れて言ってしまった。考えてくれると言ってくれたのが嬉しかったが冷静になったらとてつもなく恥ずかしくなりあのあと避けまくったというわけだ。
「あの写真は夏樹くんのお母さん?」
指さされた方を振り向くと本棚の上に置いていた写真立てだ。写っているのは笑顔で赤ちゃんを抱いている女性だった。
「俺のお母さんらしいです」
「らしい?」
「おれ自分の親のこと知らないんです・・・。聞いて貰えますか?」
ゆっくりでいいよと優しい笑みを浮かべた。
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おれはずっと母の父に育てられた。祖父から聞いたが母は自殺したと祖父から聞いた。理由は母は元々、大人しくしとやかな女性であったが人関わるのが少し苦手だったらしい。
その性格を利用するように漬け込んだ男がいたらしく貢がせて結婚することまで約束し孕ませた。だが、おれを産んだ後、男は本性を出し母を捨てて逃げたという。
そして母は暫く育ててくれたらしいがおれに対して後ろめたさとその男に似ているという事実に耐え切れなくおれを残して命を絶った。
その後、祖父が引きとってくれ19歳になるまで育ててくれたが、祖父も亡くなり知っている血縁は誰もいなく大学の近いこの町に引っ越し一人暮らしを始めた。
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