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恋は突然に。~夏樹の場合~

「憧れだったんです、秋広さんの家族が」  最初この町に来た時、近くになにあるか散歩兼ねて歩いていたらたまたま見つけたのがあのお店だった。中に入って気づいたけど繁華街から少し離れているのに結構賑やかで女性や男性のグループ、老夫婦や家族ずれが多くいた。  切り盛りしているのは夫妻で優しげな雰囲気でそれにてぬくもりを感じさせる性格がこの客層を呼ぶのだと何度か通って知った。数回ほど通ったとき店の人からしたらただの客なのによく声をかけてきては優しく接してくれて世間話や子供たちの話、そして神山家の兄弟にも会うことができた。 「一緒にいるうちに楽しくなった。でもおれにはもう家族居ないし頼れる人もいなくて疎外感を感じたんです」  全て言ってしまった。こんなこと誰にも言ったことなくどんな顔していいかわからないし秋広さんの顔を見れない。 「なんて顔してるんだ。おいで」  頬の当たりを親指で触れて腕を開いていたが一向に抱き着いてこないおれを見兼ねて抱き寄せた。秋広さんの胸に顔を埋める形になった。 「我慢しなくていい、ちゃんと俺が守るから」  その優しさと言葉で心を揺すられ中で蓋していたものが溢れ零れだした。気づいたら泣いていた。 「ふっ、うっうっ」  トントントンと優しく慰める様に背中を叩いてくれた。  結構泣いた為か、泣きすぎて目が痛い。泣き終わったのを確認した秋広さんは目元の涙を拭ってくれた。 「・・・俺たちは血が繋がっていないんだ」 「俺たち?」  言葉が足りなくて誰のことがわからなかったがオウム返しのように尋ねると答えてくれた。 「ああ、ごめん。俺と親は血繋がっているけど弟たちは繋がっていない。昔二人の親は事故で無くなってまだ小さかったから俺の親が養子として引き取ったんだ」  初めて聞く話にびっくりする。 「小さいころに親が居なくなったら夏樹くんみたいに辛いはずなのに、16年一緒に家族として暮らしてきても血が繋がっていない事実にどう思ってんだろうとかあれからあいつらの涙なんて見てないなとか無理に笑わしてんじゃないかなって色々考えるんだ。まあもう悲しい思いさせないように父さん母さんと俺で努力したけどよくぐれずに来たもんだよ」  その顔知っている。恥ずかしいが先程からおれを見る、大切で愛しいものを見る表情で本当に弟たちを大切に思っていることが伝わってくる。  

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