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優しく触れて。~拓海の場合~
「そうだ、麻耶ちゃん夜空いてる?この収録で終わりだから久しぶりに飲まない?お酒の美味しい店見つけたんだ」
「いいわね!明日店も月曜日で定休日だしね!」
麻耶さんはお酒という言葉に反応し考える間もなく承諾した。
「それならよかった。拓海くんもどうかな?」
俺はいいですと断ると振られた~と笑いまた嘘くさく言った。ヘアメイクが終わり現場に向おうと部屋をでる牧さんを確認しため息をついた。
「拓海ごめんね~。あいつ昔からああなのよ。でも悪気はないし自分に素直なだけ」
俺の周りにはあまりいないタイプなので接し方が難しく苦手なタイプだ。
「昔からの知り合いなんですか?」
「同級生で幼馴染なの」
だから下の名前呼びなのかと納得し二人は美男美女でそして幼馴染って漫画的には恋に発展しなくもないのに現実ではそうもいかない。麻耶さんは女性が恋愛対象だけどあの人はどうなんだろう。
「今日はありがとう、助かった!もう終わったし片付けは私がやっておくから拓海は帰っていいわよ」
俺は麻耶さん言葉に甘えることにいて自分の荷物を持って挨拶しビルを出た。
そういえば今日は予約のお客がいるから定休日だけど夕方から店開くって言ってたっけ、手伝おうと考えて家に向かった。
18時頃家に帰って来てすぐ店に出たころには既に開始していた。母さんは疲れている俺を気使って手伝いはいいよと言ってくれたがなんだか今日の出来事でざわついた心を働いてたら、落ち着くのではないかと思い断った。店にはざっと15人程の団体客がいてと父さんと母さんと夏樹が出ていた。陸は朝、友達と勉強すると言っていたので分かっていた。
「夏樹、秋は?」
「秋広さんはこの流れで夜も開くらして昼間からの通しだと身体疲れると思ったので寝てもらっています。たまたま来ていたおれが代わりに手伝いで出ています」
たまたま、ね~と卑しく言うと夏樹は意味を理解したのか頬を赤くし慌て始めた。
「拓海くんいつもクールなのにこういう時たまに意地悪な顔しますよね、もしかしてツンデレですか」
俺は身内には優しい方であるので夏樹もその対象で弟のように思っているため普通に接するがツンデレと言われるとよくわかないしただ気持ちを伝えるのが苦手なだけだし家族には素でいられた。何も染めていないさらさらした夏樹の髪を撫でた。
「ツンデレじゃないよ」
夏樹は髪を直して兄弟そろって同じことをすると呟いた。自分より小さい身長の人いたら頭を撫でたいのは当たり前だと思う。
「夏樹くんと拓、この料理と飲み物運んで~」
父さんに声かけられまた忙しく働きお開きになったころには時刻は21時過ぎていて既に起きてきた秋広たちと共に片づけを始める。中には先程の団体はまばらにいたが早いうちからやっていた事もあり次の店に行こうと幹事らしき人が声を上げて退出していった。
「夏樹くん今日はありがとう。送りたいところだけど今日はここで、またね」
「いいよ、俺コンビニ行くし同じ方向だから俺が代わりに送っていく」
なら、氷少ないからかってきてとお使いも追加され二人で店を出て、こういう時にしか聞けない秋とのことをこれでもかっていう程聞き出し夏樹は始終ゆでだこのように真っ赤になった。
二人は本当に愛し合ってんだなと感じた。そんなことを話しながら夏樹の家に着きさよならをして俺はコンビニへ向かった。
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