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優しく触れて。~拓海の場合~
目的のものを買い店から出たころ、後ろから聞き覚えのある声と人物が近づき抱き着いてきた。
「たーくーちゃーん!」
「うわ!って陸か。こんな時間まで勉強って遅すぎだ、ちゃんとか家に連絡したのか?」
陸人の目線になるようしゃがみこんでおでこを指で小突いた。
「ちゃんとしたよ~駅ついて迎えに来てもらおうと連絡しようとしたら麻耶ちゃんと会ったの。ほら、あそこ」
指さされた方向を見ると麻耶さんと隣に長身の男も一緒で昼間のことを思い出した。
飲みに行くと言っていたけど、まさかだけど、あの人も一緒ですか・・・
「牧龍之介に似てるの」
その一言で俺の考えは的中した。弟よ、「似てる」じゃなくて「本物」だよと心の中で突っ込む。
段々その人物は俺たちの方へ近づいてきて、暗闇から顔を見え帽子をかぶり大きめの丸眼鏡をけていたが雰囲気で分かりやっぱりと思いつつ、牧さんたちに頭を下げた。だけど、麻耶さんは手を振っていたが牧さんは誰?という顔をしていた。なんでわからないんだと思ったが、帰って来てから眼鏡にしていて何しろ店の制服をきたまま出てきたのを忘れていた。なんだ、分からないならそれを利用できないかと思ったがそれは無理だった。
「拓海~ちょうど良かった、今から店に行くつもりだったのよ~陸人くん早く行こうか~」
明らかにテンションが高い麻耶さんは語尾が伸びてるあたり偶然陸に会えたことが嬉しいのだろう。
「たくみ?・・・あ、拓海くん!眼鏡に制服・・・それコスプレ?」
「こす・・・違います!店の制服です」
二人は一件目を終えてから駅に着いたとき麻耶さんは見覚えのあるシルエットを見つけ声かけると陸で行くついでに送るといいここまで来たという。きちんと秋には連絡は既に入れたらしい。
四人で店まで向かうが、麻耶さんと陸はとても楽しそうに前を歩いていたが、俺と牧さんは無言で歩いていた。
気まずい・・・そして横からめっちゃ見てくるんだけど・・・
「あの、そんなに見ないで貰えますか?」
「君も見ていたじゃないか、トイレで僕のちん・・・」
「あーもう下品な事言わないでください」
遮るように言い、そんないい顔でこんな公衆の場で言わないでほしい。
「なんか拓ちゃん楽しそうだね!着いたよ~秋ちゃんただいま!」
別に、そうじゃないと答えて中に入ると日曜日で臨時営業したのに関わらず数人いて、秋はいらっしゃいませと挨拶し俺は秋に氷を受け渡すと二人を席に案内し、陸にはもう遅いからと早く入浴と睡眠を促し家の中に入れた。
「こんばんは、麻耶さん陸のことありがとうございます。飲み物何しますか?」
「いいのよ、陸人くんに会えたから~。ジントニック頂戴。龍之介は?」
牧さんは同じのと答えて周囲を見渡していた。
「ここは拓海くん家のお店?」
「はい、正確には父の店で昼間はカフェで夜は兄貴がバーやってます」
隣でお酒を作っていた秋がこっそり知り合い?と聞いてきた。事情を説明し名前を言うと驚いた顔をして目の前の牧さんを見ていた。
「ああ、初めまして、お兄さん。大きい声で言えないけど牧龍之介です、よろしく」
有名人がここにいるのが慣れないのか秋は珍しく緊張していた。え、そんなに緊張するとこ?イケメン同士がお互いを褒めあいしているのを横目に麻耶さんはニコニコ笑っていた。余程陸に会えたのが嬉しいのか余韻に慕っているようだった。
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