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優しく触れて。~拓海の場合~

 三人で色々話をして盛り上がっていてそれを俺はただ聞いていた。欠伸が出そうになり手で隠すように口に手をあて時間を確認すると深夜を回っていた。その一部始終を見ていた牧さんと目が合い慌てて目を逸らし秋に告げる。 「秋、俺もう部屋戻る」  お疲れと言いながら頭を撫でられ、特に人前でやられたことが恥ずかしくて隠すように頭をぶんぶんと振り、秋によって乱れた髪が更に悪化した。また、と二人にも挨拶して去ろうとした時牧さんに呼び戻された。 「待って、拓海くん。明日休みだよね?デートしようか」  俺だけではない麻耶さんと秋も「え」と同じ声を上げた。 「まーたーあんたは突拍子ないことを・・・」  携帯見せて言われ疑うこともなく渡すとなにか打っていてまた戻された。 「僕の電話とアドレス入れていたから、また明日。麻耶ちゃんもう帰るよ」  牧さんは支払いを済ませて荷物を持ちドアに向かった。もう!と少し怒ったような口調ではあった麻耶さんだったが、また俺にごめんねと何度目かの謝罪をし牧さんを追いかけるように店を出た。 「すごい人だったね」  確かに考えるよりも行動して結果を出すみたいな感じで俺とは正反対すぎて付いていけなかった。だから俳優として成功したのだろう。  秋にもう戻りなと言われ部屋にいき寝る準備をして今日起きた出来事を思い出していたらいつの間にか眠っていた。  電子音で目覚めると時間は朝8時を回っていた。全然鳴り止まない音の主を確認すると携帯に着信が着ていた。表示名は「龍」だったが登録した覚えのない名前となり続けていたので出ることにした。 「・・・はい、もしもし」 「おはよう、拓海くん。寝ていたみたいだね、声がハスキーだ」  声で分かる、これは牧さんだ。なんで番号知ってるのか考えると昨日のことを思い出す。電話越しなのに変わらず良い声が耳を魅了する。 「・・・おはようございます。どうしましたか?」 「今日のデートのこと伝えようと思ってね。今から遊園地に行こうか!30分後にそっちに迎えに行くから準備しておいてね」  こっちの要件を聞くこともなく電話が切られまた時間を確認しため息をついた。  風呂に入り、適当なカジュアル服へ着替えて俺の命である前髪に時間をかけるとあと五分という時間となりコンタクトも入れる時間もないままリビングに行くと、なぜか普通に牧さんが母さんと話していた。 「拓、おはよう。いつ龍之介くんと友達になったの~?良かったわね~」  母さんは既に名前呼びで父さんまでもはいってきていつの間にか良い雰囲気が出来上がっていた。 「今日は息子さんとデートに行くので、今日一日大事に預からせいただきますね」  よろしくお願いしますと二人は頭を下げるが、デートと言う言葉に突っ込まないことについて心が広いにも程がある。 「牧さんじゃないですか、おはようございます。これからデート行くんですね」  行くんですかじゃないでしょうが、秋まで普通に受け止めるのかと考えたが既に彼氏がいるからだと納得した。 「じゃあ拓海くん行こうか。では行ってきますね」  みんなに見送られ牧さんの車に案内され助手席までエスコートされ乗車した。俺は女性ではないけどここまでそつなくこなされたら世の女性は惚れてしまうんだろうと思う。流石、人気の俳優だ。俺には絶対にできないことだ。 「・・・どうも」  牧さんはすっと話していたが、俺は相槌のみで顔すら見れず二人だけというこの空間が緊張を招いた。 「あの一つ聞いていいですか?」 「なんだろう」 「なんで俺をデートに誘ったんですか?しかも遊園地って牧さんならもっとおしゃれなとこ選びそうなのに」  少し間があり先程の笑顔が一瞬消えたがすぐ戻りいつものように答えた。 「うーん、息抜きだよ」  なにかあるようだったがこれ以上は追及はしなかった。聞いてはいけない気がした。そこから何も聞けずに流れていく街を窓越しに眺めるしかなかった。 「さあ、着いたよ。ここからはプライベートだ、牧じゃなくて龍って呼んでね。拓海」  さらっと名前で呼ばれてドキッとした。牧さんは先に出てまた行きのようにドアを開けられ鍵を閉めた後帽子とサングラスをし手を引かれ搭乗口へ向かった。  手!というとただ笑顔を向けるだけで離す気配はなくそのまま入場した。 「拓海、さあどこいこうか!」  30代には見えないはしゃぎようで牧さんがいう色んなアトラクションに乗り食べ物食べたりグッズを買い身に着けたりと俺も柄にもなく楽しんだ。 「牧さんて本当に30代ですか?このはしゃぎ方はそう見えないですね」 「龍って呼んでって言ったじゃないか。まあいい。柄にもなくね。まあ35だけど心はまだ子供だから」  今ので麻耶さんの年齢を知ったことを笑いながら伝え、牧さんを見上げると目を細め穏やかな笑顔向けていて初めて見る顔にギュッと何かが掴まれるような感覚と懐かしさと少し照れくさく感じた。 「もう少しで終わりか。最後にあれに乗ろう」  あれと指定したのは男性二人が乗るには恥ずかしい乗り物、観覧車だった。  

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