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優しく触れて。~拓海の場合~

「メルヘンだ・・・」  従業員に案内され乗車すると観覧車の内装は動物のキャラが書かれていて中はピンク色でハートやらなにやらの記号が散らばっていて見るからにこども受けのする内装だった。だから入るとき従業員は俺たちを見て怪しそうな目をしていたのか。牧さんはそんな従業員を気にせず楽しそうに中に乗り遠くなっていく景色を眺める牧さんの横顔を俺は眺めていた。  数分無言が続くが視線を前に向けた牧さんと目が合い慌てて逸らし茶化すように言った。 「そんなにみて僕に惚れちゃったかな?」 「冗談言わないでくださいよ。景色みてただけです」  誤魔化すようにそう言うとふと席を立った気配を感じ、牧さんを見たとき顔に大きい手が優しく触れ、目にかかる髪を少しかき分けて出来物一つない綺麗な顔が大きくなっていく。 「冗談、じゃないよ。・・・拓海、僕を愛してくれ」 ----------------------- --------------- ----------  あれから牧さんは変わらず連絡してきては時間あるときに会いに来る。あの時俺は一瞬時間が止まったように感じ牧さんから目を離すことも答えることも出来ずにいて、丁度周回が終わる頃にはぱっと手は離れて次に俺の手をまた引いてそろそろ帰ろうと告げ、車に乗って家までの道を走った。その帰り道何を話したか、逆に話していないかなんて一つも覚えていなかった。  あの意味はどういうことなんだろう。色々考えても自分が牧さんのことを何も知らないことに気づいた。麻耶さんなら聞いたら教えてくれるだろうか。いやでも本人が望んでいないことを他人から聞くっていうのもおかしな話だ。 「たく、拓海!ちゃんとしなさい!」 「はい!すみません、考え事してました」  業務に集中できない程悩んでいて周りが見えていなかった。すぐ麻耶さんに謝ると気持ちを切り変えて掃除を始めた。業務終了後、居残り練習をする気にもなれず、帰りに麻耶さんに謝り店を後にした。 「はあ・・・」 最近こんなことでよく怒られることが多くなった。今まではなくプライベートは仕事には持ち来ないかったのに今回ばかりは忘れようにも頭に残りあの時の牧さんと言葉が俺の中を占領する。  会ってもなんで普通なんだろう、あの人は。やっぱり冗談だったり?あんな言い方だと俺じゃなくてもいいはずだ。でも俳優という仕事をやってるから愛の言葉も意味もなくサラッと言えてしまうんだろうか。ふと横から聞きなれた声に振り向くと液晶に映った牧さんだった。美容のCMで最後に女性と額をくっつけて愛の言葉を囁くという内容だった。近くにはポスターがあり商品と一緒に映っている本人を見つめた。 「あい、してる」  はあ、一緒になって言ってみたけどこんな何回も言っていい言葉でない気がする。こんな人通りのある所でポスターに向かって言うなんてもっと恥ずかしいことだ。 俺はしてんだと頭を抱えた。 「拓海。そこは本物に言うべきじゃないかな」  耳に柔らかい優しく甘めの声が響き身体が痺れるような感覚が一瞬あったが振り向いて何歩か程距離を取って見ると眼鏡をかけマスクを顎まで下げた牧さんが立っていた。  ぼそっと何か言っていた気がしたが小さくて全く聞こえずなぜか手を引かれ、行こうかとどこかに連れていかれた。 「え、ちょ、ちょっと!どこ行くんですか!」  僕の家とタクシーに乗せられ手を繋がれたまま特に話すこともないまま窓をむいて着くのを待った。暫くして高層ビルに着き降りた後も引かれながら家まで案内される。  牧さんの家は白と黒で統一され家具は必要最低限のものしかなくただ寝るだけに帰って来ているようだった。人気俳優となれば忙しいのかほぼいる時間がないのだろう。    

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