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優しく触れて。~龍之介の場合~
収録は思いの他、時間がかかり時刻は22時を回っていた。
拓海いるかなと心配になり、メッセージを入れるが返事は返ってこない。
車で急いで家へと向かい、フロントで鍵をあけて自分の部屋番号まで急いでいき、居てくれと願いながらドアを開けると家の中は明りが付いていて、靴もあり本人がいるのを確認できた。
「ただいま」
返事はなくどうしたんだろうと思いすぐにリビングに行くとテーブルには何個か料理が置いてあり、拓海はテーブルで腕を組みながら寝ていた。
一緒にと言っておきながら返事も出来ず恋人を待たせてしまったことに少し自分が情けなく感じた。荷物と眼鏡をテーブルに置いて、ソファーに座り寝ている拓海の頭を撫でた。そして料理に手を付け冷めていたが、好みの味でとても美味しかった。
「君も疲れているのに申し訳ないな」
全く起きないのを確認し、拓海をゆっくり持ち上げると意外と軽く自分の方へ向き合うように膝の上に乗せた。
抱きしめると首元で心地よい寝息がし、少しくすぐったくて今まで感じたことない気持ちになる。愛しいものを優しく撫でながら、こんな時間も悪くないなと思う。
暫くして、拓海は肩で身動ぎ眠たい目を擦って顔を上げたが自分が今どこにいるか理解し恥ずかしくなったのかまた肩に顔を埋めた。
「・・・なんで抱きしめられてるんですか」
「可愛いからなんとなく」
ははっと笑うと照れ隠しなのか胡散臭いと言いながら、更に強く肩に顔を埋めた。
脇に手を入れて顔を見えるようにし、ご飯のお礼と待たせたことの謝罪をした。
「別にいいですよ、理解してるので。とりあえずお疲れ様でした」
前髪で隠れた目越しからもわかるが、切れ長の目に僕を映していてきちんと見ているのがのがわかりホッとする。
「あと言いずらいんだが、今日麻耶ちゃんから聞いてしまったんだ、君の家族のことと顔を隠してる理由。ごめん」
聞いた後拓海は顔を下に向け口を紡いだ。
「何も知らなくて、会った時のあんなことして申し訳なかった」
下を向いている拓海の頬に親指でさするようにそっと撫でるとゆっくり顔を上げ、猫のように手に頬を擦り付ける様に甘えてきてその仕草が鼓動を早くした。
「・・・俺、クォーターなんです。父はフランス人と日本のハーフで日本人の母から産まれた。弟は母に似ていて、俺は父似でこの目は大好きな父に似ている事が嬉しくて好きでした。」
柔らかな笑みを浮かべ親を思い出して話している拓海を見る限り親のことが好きだったと感じる。
「・・・でもある日、親は病院の帰りに車の事故で母のお腹に妹もいて一緒に亡くなってしまった。その時俺思ってしまったです、母が妊娠してなかったら、妹が居なかったら、父まで行くこと無いのにって。暫くして亡くなった事実がやっとわかった陸が俺の顔みて泣くんです。何度も何度も・・・拒絶されたように思えた」
「だから、隠したの?」
頷いて静かに泣く姿を見てこの子は感情を隠してあまり泣いてこなかったんだと理解し、涙をすくように頬に口づけた。
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