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そんな君も好き~陸人の場合~
長い一週間が遂に終わりに近づいてきた、金曜日。
今日は体育祭の種目決めでクラスは賑わっていた。笠松先生も参加していてにこりともせず真剣に話を聞いていた。
「陸人は何にするか決めたか?俺、絶対お前と同じ種目出る!」
「俺もそうしようかな!陸人居たら勝てる気がしかしないぜ」
ちゃんと真剣に選びなよとかなちゃんがはいってきていつの間にか数人の輪ができていた。
「僕は~バスケとリレーとサッカーと・・・」
うあ、そんなにでるのかと呆れ気味に言われたが、運動は楽しくてしょうがなく体力が持つ限りやりたい派だった。
この学校の体育祭は二日間にわけてクラス対抗で行われる。今年の体育祭は来週の木曜と金曜日の予定だ。
「ねえねえ、はる、えと、笠松先生はスポーツ好き?」
僕はずっと声を発することもなくただみんなのことを見ていた笠松先生をちらっと見て輪を抜けて近寄って聞いてみた。
「は、ま、まあ好きだ。」
突然話しかけられたことに驚愕して少し間があったが答えた。
「そっか~。そうだよね、先生は体格いいし、スポーツなにやってたの?」
了承を得ず身体に触れるとびくっとして硬直した。
「バ、バスケだ」
「通りで身長も高いんだね!羨まし~」
担任に神山戻ってと言われ、笠松先生にありがとう、またねと挨拶してまた先程いた席に戻るとみんなにびっくりした顔をされたけど気にしなかった。
「りっく「陸人~今日はバスケしようぜ~」」
帰る準備をしているとかなちゃんが何か言いたげに声をかけてきたが友達の一言で打ち消され、バスケの誘いをしてきたが家の手伝いがあるからと断った。その後かなちゃんに向き合ってからまた聞き返すと何でもないよと笑顔で言った。
「バイト頑張ってね、また月曜日」
手を振り、かなちゃんと別れて玄関に向かうと、前に鞄を持った笠松先生が見えて声をかけてみた。
「あ~先生!今日はもう帰るの?もし時間あるなら店に来ませんか~?」
てか、行こう!と手を引いて玄関に行くと待ってくれと言われ立ち止まった。
「え~?急がないとケーキなくなっちゃうよ?」
その言葉に悩み唸った。僕は答えを待つこともなくとりあえず行こ!とそのまま手を引っ張って玄関をでる。
「まだ何も言ってない!」
そんな先生を気にせずに走って家まで来て、息切れしているのも気にせずに店の入口に足を踏み入れる直前に何かいいたげな先生を見ていると、後ろから声がした。
「陸、おかえり、ってどうした?」
「秋ちゃん、はるちゃんを連れてきたの」
中に招き入れて、先生は戸惑ったような様子で席に着く。なっちゃんが来て手伝ってくれていたので僕は用無しだと言われ、笠松先生と一緒にカウンターの席に座る。
「おしぼりどうぞ。なににしますか?」
「ありがとうございます。・・・えっと」
メニューを貰って見ると沢山あるからか、結構悩んでいた。顎に手を当てうーんと小さく唸りながら考えいる姿が見た目に反し可愛く見えた。
「和菓子は好き?これ、今の季節ならオススメですよ。ういろうの上に甘い小豆載せた水無月。これ京都のスイーツなんだけど真似て作ったら結構人気で」
「秋ちゃんのは一番美味しいの!」
じゃあそれでと言いながら、どこか緊張しているように見える。
「笠松先輩、覚えているかわからないんですがおれ、大学一緒の仲山 夏樹です。」
ああ、鹿川教授のとこのと思い出したように言い、どうもと挨拶した。
「はい!これからよろしくお願いします」
「どうぞ〜。もしかして陸人が無理やりとか・・・」
ど惑いながらもちらっと見られ頷いた。
「りく〜ちゃんと人の意見も聞きなさい」
だってーと言っていると笠松先生は目の前のスイーツをじっとみていて、話を聞きながらも早く食べたいという顔をしていた。
「ごめんごめん。食べていいよ」
1口食べた時、緊張していた顔も綻ぶようにとろんとした顔をし美味しい!と大きい声でいった。そして直ぐにはっとし、すみませんと謝った。
「ははっ。甘いの好きなんだね。良かった、気に入ってくれたみたいで。これ、みんなに配ってるクッキー上げるよ」
「ありがとうございます」
ペコッと頭を下げて受け取り、横から見る顔が嬉しそだった。
「ねえ、はるちゃんはるちゃん!明日暇ですか?」
横からまた無理やりと秋ちゃんが言うけど、次は答え待ちだもんとやり取りをずっと笠松先生は見ていた。
「はる、ちゃんというのは、どうかと思うが、明日時間はある」
「やったー!なら、連絡先交換!」
無理矢理のように連絡先を交換した。暫くして笠松先生はそろそろ帰るといい、今日のお礼を言った。
「悠くん、今日は無理やりだったけど来てくれてありがとうね。陸人をよろしくお願いします」
なんで名前という顔をしたが、秋ちゃんが頭を下げてお礼を言うと慌てたようにこちらこそと深く頭を下げたのが可笑しくて笑ってしまった。
またね〜と手を振って見送ると秋ちゃんは陸はー!と少し怒ったように強めに頭を撫で、それを見てなっちゃんは笑っていた。
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