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そんな君も好き~陸人の場合~

  「おっはよ~」  今日も元気にかなちゃんの後ろから抱き着いて挨拶をすると、にこりとおはようと言われる。今日は体育祭でがんばろっかとクラス一段となって意気込んだ。  まず初めに有志が行われ中には漫才・ものまねや借り物競争と場を和ませるような種目があり楽しい一日が行われそうだと僕は思った。  次はバスケとサッカーなのでかなちゃんにがんばってくると伝えて体育館に向かった。 「よ~し、まずはバスケ!僕たち優勝目指して頑張るぞ~」  円陣を組んで僕の掛け声と共にクラス男子は熱くした。それが嬉しくて心から喜んだ。 「そこ、マーク!」 「陸人!」  ゴール下にいた僕にパスが来てそのままシュートすると一点がはいり友達が集まってくる。 その時にちらっとベンチにいたはるちゃんがをみるといつもと変わらない顔で試合を見ていた。  ぴーと開始の笛が鳴ったのを確認し相手からボールを奪うと、仲間ではないけどベンチにいたはるちゃんにパスをした。反射するようにはるちゃんはボールを受け取るがなにがなんだかわからないような顔をして、走って近づいて早くと引っ張るようにコートに入れるが「トラベリング!」と笛が鳴りまた相手チームになるが呆れたような顔をしたはるちゃんはまったくと言いながらなんだと言った。 「はるちゃんも参加しよう!」  友達が集まってきて話すと驚愕していたが、仲間の一人がはるちゃんと交代するように参加した。 土曜日の時も思ったが、はるちゃんはとても楽しそうな顔をするのは解っていた。スポーツをしているときいつも物調ずらのあの顔もなくなるように明るい表情をする。だからそれをみんなに解ってほしかった。  無理やりだったが、はるちゃんの活躍もあって優勝ができ、みんなはるちゃんに集まって喜んでいた。  すごい!そんな一面もあったんだとクラスのみんなは言っていてそれを眺めたあと、その場から離れるようにトイレに向かうとかなちゃんに会った。 「なんで笠松先生を誘ったの?」  うーん何となくと笑い答えるととじーっと見られた。トイレに行きたいと背を向けると腕を掴まれ、あることを言われそっと手を避けた。 「・・・ごめん」  色々考えても答えは見つからずトイレを済ませて次ぎの種目サッカーだと聞いてグラウンドに急いで向かった。  また円陣を組んで勝つと言って試合が始まった。僕の調子は出なかったが結果的には勝った。  そして二日間の体育祭は終わりを告げ、総合優勝として僕たちのクラスは優勝した。それをきっかけとしてはるちゃんは人気が出てはるちゃん先生と呼ばれるようになりクラスのみんなから慕われていた。  話しかけてもはるちゃんには人が集まり話も出来なかった。そしてあの出来事からかなちゃんとは話も顔を合わせることも出来ず一人の時間を過ごした。 「りっくん、今大丈夫かな?」  放課後になり帰る準備していた時かなちゃんに声をかけらえた。頷いてみんなにカラオケに行こうと声かけられていた為後で行くからと告げ、教室に誰もいなくなったのを確認し先にかなちゃんは言った。 「この間のこと、なんだけどきちんと言うね。わたしまだりっくんのこと好きなの、ずっと。あなたの隣にいるのは私だけって思ってたのに、この間笠松先生と出かけてるの見て勘違いだって思った」  下を向いて悲しそうなのが顔を見てとれた。 「なんでなの?私のこと好きじゃないの?私だけじゃないの?」  じりじりと近づいてくるかなちゃんの知らない部分に怖くなり、後ろに下がったが、その一言で我に返り考えた。確かに楽しさとという言葉を求めて優しくしてくれたかなちゃんや友達に甘えていた。 「これだけ三年間りっくんのために一緒にいたのに、なんで笠松先生に取られなきゃならないの!」  なんではるちゃんの名前を出すのか聞くと更に声を荒げた。 「それ!はるちゃんって何?私だけが特別だって思ってたのに私が知らない顔をしてあいつの名前を呼ぶの!なんでその顔でわたしのことを、わたしをみてくれないの・・・」  胸元を掴んでそして泣き崩れる様に僕の下で涙を流していた。その姿を見て、自分の行動が浅はかだったなと思いとても辛かった。しゃがみ込んでかなちゃんを抱きしめたとき、ドアが開いてその主と目が合った。  それははるちゃんだった。

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