「は、るちゃ・・・」 「・・・すまない」 　たったそれだけ言ってまたドアを閉めて去っていくのを追いかける様に立つがかなちゃんに腕を掴まれ追うことは出来なかった。 「待って・・・笠川先生のこと好きなの？」 　その一言がよくわからずかなちゃんを見ているとまたそんな顔すると言い握っていた手を緩まれた。 「わかってる。最近のりっくんの中にはあの人しか映っていないのは解っていたよ。昔のこと調べたんだ、りっくんに本当の家族居ないことも知った。今のあなたの家族には見てても勝てないけど学校では私だけ、私が支えなきゃって、特別な存在になりたいって思った。突然現れた先生に私には見せない、家族に見せるような顔ばかりするの！もう無理だって思っちゃった・・・」 　確かにずっとはるちゃんの顔が離れない、頭に浮かぶのもはるちゃん事だった。自分しか知らないことは誰にも教えたくない、笑った顔も見た目に反して甘いもの好きなのもふとした瞬間不器用なのに優しいところも全て忘れられない。 「かなちゃん君の気持ちは解った。僕の行動と言動が君を追い込んでたんだね。でもありがとう。そばに居てくれて優しく笑ってくれて好きでいてくれて感謝してる。これからは素直に気持ちを伝えられる友達として一緒に居たいんだ」 　抱きしめて気持ちを言うと泣きながらもどこまでもお人好しなのと笑って言った。暫くかなちゃんが泣き止むのを待っていたが全く泣き止まなくてそのままいたが、深呼吸を一度して私は大丈夫だからと立って言った。 　それに僕は戸惑っていたが、背中を押されるように教室から出されたが、ドア越しに振り向いてかなちゃんにありがとうと呟いた。 『・・・そういうりっくんが好きだったよ』とかなちゃんの呟く声が聞こえた気がした。 　あれからはるちゃんを学校中探してもいなくて会うことができなかった。そのまま家に帰ってご飯を食べることもせず部屋に行き宿題を無我夢中でしていると時間を確認し２２時になるのをみるとお腹が鳴った。リビングに行くとおにぎりとお母さんの字で食べてねとメモが書いていて嬉しくなり全て食べた。だけどそれだけでは足りなくて秋ちゃんに作ってもらおうと店を覗くと、麻耶ちゃん、龍ちゃん、拓ちゃんもいた。 「あ～ん、陸人くん大丈夫？秋広から聞いて心配したよ！」 　僕の姿を見てすぐさま抱き着いてきたのは麻耶ちゃんだった。 「麻耶さんの陸を見つけるセンサーやばすぎ。陸お腹空いたの？」 　そんな拓ちゃんの一言で二人は笑って、龍ちゃんは僕も拓海を直ぐ見つけられる自信があると自慢していた。 「そうだろうと思ってオムライス作っておいたよ。温めるから座りな」 　秋ちゃんの一言で頷いて席に座り温めてもらったオムライスを目の前に手を進めると勉強で紛らわそうとした頭がおいしい食べものによって頭が軽くなった。暫く食べながら話していると、秋ちゃんが言った。 「悠くんは元気？陸を見てるとあの甘いものを美味しそうに食べてる姿が忘れられないよ。作り甲斐がある！また連れておいで、もう少しで実習終わりだよね？」 「そっか、はるも先生か。秋、俺たち昔遊んでたことあって知ってるんだ。陸はまだ小さかったかったしあの時泣いてた・・・なんでもない。龍さんもう一杯飲む？」 　拓ちゃんは何か察したように話を切りかえて龍ちゃんに話しかけ、みんなは何か察するように話を変えたがまた気を使わせるようでそれが僕の中でよくわからない感情が沸き上がりそれを抑えることも出来ずに声を上げた。 「なんで、そうやってまた気を遣うの・・・なんで。昔なんて知らない。気を遣うなら昔の話をするな！あの時は僕のせいなんだ！なんで責めないの、拓ちゃん！言えばいいのに僕が悪いって！拓ちゃんが泣かなくなったのも顔を隠してるのも僕がへまして作った腕の傷も全て僕のせいだって言えばいい！なんで、なんでなの・・・う、わああ、ううっ」 　そこから僕は何も覚えていなく、朝になって学校を行く気も起きずずっと家にいた。みんな出かける前に部屋に来ては声をかけてくれたが返事もしなかった。 　落ち込んでいてもやっぱりお腹は空くもので誰もいないことを願って静かにリビングに行くとお父さんお母さんも秋ちゃんもいなくホッとしたは反面残念に思ってしまった。 　はあと長めのため息ついてテーブルを見るとおにぎりとメモがあり、見ると拓ちゃんの字で書かれていて、たった一言だった。 『陸へ。みんなで握ったから沢山食べて』 　それが嬉しくて食べながら泣いてしまった。