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そんな君も好き~陸人の場合~

   今日はみんなと一緒に朝食をすることはしなかったが元気よくいってきますと家をでた。なんか吹っ切れた気がしたが、まだ拓ちゃんと上手く話せない気がしてこの二日間会わずにいたけどその内向き合わなければならないのは解っていた。  でも初めにはるちゃんの誤解を解かないといけないと思い、登校してすぐはるちゃんを探してもやはり話しかけられなかった。というより実習残り少ないからなのか忙しく授業の時も真面目に教えてる姿を眺めるしかなかった。近くに来た時にぼそっとはるちゃんと呟くとびっくと肩を鳴らし少し目があったが逸らされた。  それから拓ちゃんとも必要以上に話すこともはるちゃんとも会話もないままあと一日という日を目の前に考えていた。 「りっくん、大丈夫?」  ため息ついて額を机にくっつけているとかなちゃんの声が聞こえ顔を上げる。あのね~と普通に話しているがあれから僕たちは今まで通りお互いを『理解しあう親友』として関係を築いた。  全て話した後に息抜きに出掛けようと提案してもらい、学校をでて電車で街に出た。暗くなってそろそろ帰ろうと駅に着いた時、見知った二人の姿が見えた。なにか真剣に話しているみたいで何より何故二人が一緒にいるのか解らなくて考える前に身体は動いた。 「はるちゃん!」  はるちゃんの手を引いて、一緒にいた拓ちゃんから離れる様にその場から走るように去った。 「ま、待て。神山!」  無我夢中にただ足を進めていたため足を止めてどこか解らずいると、はるちゃんは僕の手を掴んで離させた。それがなんだか悲しくて俯いていると覗き込んでどうしたと優しくいう。 「・・・はるちゃんは拓ちゃんが好きなの?」  は?と言っている意味が解らないという表情をしていて違う、相談を受けたと言ってすぐに言い返してきた。 「お前こそ高瀬はいいのか・・・付き合ってるんだろう」 「違うもん!僕が好きなのははるちゃんだよ!」  冗談はよせと戸惑いがちに目を逸らしながら一歩下がるのを僕は見逃さず、腕を掴んで身を封じた。 「その似合わない眼鏡も好き!顔に似合わず甘いものが好きで笑うと皴寄せて笑う姿も好き、声もその大きい体格も手も不器用な優しさも好きだよ。はるちゃんの全てが好き!」  真っすぐはるちゃんを見ると同じように見ていて驚いたように瞳が動いてなにか言いたそうに、でもぐっと何かを抑える様にまた目を逸らし深呼吸を深くしてから身を正した。 「神山、ありがとう。まず帰ろうか、この話はまた明日だ」  ただそれだけ言って背を向け手を繋いで歩き出した。それが懐かしくてこの感覚を知っていた。  昔、拓ちゃんと森に遊びに出て拓ちゃんの言うことを聞かずに森を走り回っていたら小さい崖から足を滑らせそれに気づいて手を引っ張て倉田が小さい身体では無理で二人とも落ちた。拓ちゃんは腕を怪我し頭をぶつけ気絶していたが守ってくれた。入院していた拓ちゃんは暫く寝たままでもう起きないんじゃないかと一人で泣いていた時、ある男の子が大丈夫だ、泣くなと頭を撫でて手を引いてくれた。その記憶はここまでしか覚えていないしその後親が事故で亡くなって神山家に引き取られてからその子とは会えていなくそれから昔を思い出さなくなった。  ふと忘れていた昔のことを思い出し考えていると、着いたとはるちゃんの言葉にいつの間にか家に着いていたことも気づかずにいた。店の入口を見ると臨時休業の紙が貼ってあって家にはみんながいるのだと理解しはるちゃんの玄関のドアを掴む手を抑えようと僕は掴んだが半場無理やり開けた。 「待って、はるちゃん!」  僕の声が聞こえたのかみんな玄関に駆け寄ってきてお母さんは僕を遅いから心配したと抱きしめられた。 「電話でお伝えした通りきちんと送り届けに来ました。遅くまですみませんでした」  頭を下げたはるちゃんにお父さんは大丈夫だよ、ありがとうと笑顔で告げた。それに割って入るように拓ちゃんが僕の名前を力なく呼ぶのを聞いて、なにか察し帰るろうとするはるちゃんの手を掴んだ。心の中でここにいてと願いながらも強く握った。 「・・・陸、この間はごめん。何も考えずに思い出したくない事もあるよな、陸の兄ちゃん失格だ。でもこれだけは言わせて、この顔も昔は確かに嫌いだったよ。俺の顔見て泣く陸見たら悲しかったからそうならないように隠した。けどここの家族になってそれも忘れる程楽しくて嬉しくて少しずつまた好きになっていったし、何よりこれは大好きな親の形見だから!この腕の傷だってお前のせいなんて思ってない。大切で大好きな陸を守れたっていう勲章だから。俺は嬉しいよ」  そう抱きしめて、懐かしく温かい感触がぽっかり空いた穴を埋めるようにそこから溢れるように頬に涙が落ちた。  拓ちゃんごめんね、拓ちゃんこそ辛かったね。僕がこんなんだからいつもなにするのにも顔を伺って行動してくれたんだ。そうさせたは僕なのにそれでも大切に思ってくれていたのが本当に嬉しかった。 「拓、兄ちゃん、ありがとう・・・」 「はは、懐かしいなその呼び方」    後ろから玄関を開く音がし振り向いてはるちゃんに伝えた。 「はるちゃんもありがとう」  その言葉に背を向けて手を挙げて去っていく姿を見送った。

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