37 / 41

そんな君も好き~陸人の場合~

 教材室ってだけ書かれてたけどそこに来いってこと?情報が少なすぎるのとはるちゃんらしいと思ってしまった。  鞄を持たずに急いでその場所に走って向かっていると先生に走るなと言われたけどそんなの今は聞くことなんて無理だった。  早く会いたい、会って確かめたい。最後に挨拶した言葉はどう言う意味だったのかと。 階段を降りて右に曲がると奥に教材室が見見えて、徐々に走るスピードを落としていきやっと目の前に来た時息を整えた。  小さく名前を呼びながら開けるがとまだ居なくて置いてある椅子に腰掛けてはるちゃんを待った。  10分待っても来なくて寝てようかなと思っていた時廊下の方で足音が聞こえ、何故寝たふりをしようと思ってしまったのか解らないけど椅子に腰掛けて目をつぶった。 「はあ、神山すまない、って寝てるのか?」  そう言って近づいて覗き込まれている気配がする。数分そのままの状態で目を開けるタイミングを逃してもう耐えられないと思った時、名前ともに口に何か当たった感触があった。 びっくりして目を開けたらはるちゃんと目があう。すると顔を赤くしたはるちゃんが一歩下がるので立って追いかけるようにずいずいと近づいてたら下がったはるちゃんは何も無い所で後ろへと尻もちついて転んだ。 「はるちゃん何で転んでるの?」  しゃがみ込んで笑いながら問うと照れたように神山が近づいて来るからと言った。  違う、その呼び方じゃないよ 「さっきの、さっき呼んだ名前で言って」 「聞き間違いじゃないのか」  そっぽを向いて言うけれど赤くした顔がそうじゃないと語っている。 「じゃあキスされたのも夢だったのかな~」 ニヤニヤしているのは自分でも解るように残念だなと呟くとはるちゃんは唸った。それが可愛くて笑っていると急に頭をぐっと胸元に押し付けられ、なに?と聞くと上から小さくではあるが名前を呼ぶ声がした。 「り、く。・・・好きだ。その笑った顔が好きだ、明るくてみんなに優しくて楽しそうに話す陸が好きだ。ぐいぐい人の懐に入ってくるその性格も好きだ。俺を呼ぶ陸が好きだ。泣いた顔も全て・・・愛しい」  顔を上げてはるちゃんを見ると柔らかい眼差しで見ていた。すーっと指で唇をなぞられると身体の奥がぞくぞくとした感覚が起きた。 「最初会った時昔と変わらない陸に会えた事が嬉しかったんだがお前は何も覚えてなかった。お前の家族のことは知らなくて何も言わずにいなくなったからまさかこんな風に会えてこんな小さい身体で抱え込んでいたとは・・・。でもまたいつもの陸に戻って良かった」  本当に嬉しいのかずっと優しい目つきでいてこつんと額をくっつけた 「忘れているなら他人のふりをしようと思っていたのに、こんな俺にぐいい近寄ってきて好奇心旺盛のも程があるがそれが救われた。陸のおかげだ、こう実習もこの気持ちも。気づいたら好きになってた。告白も嬉しかった」 「なら、なんであの時すぐ言わなかったの?」  あ~と思い出したようにまた言う。 「それは実習とはいえ、生徒に手を出すなんて駄目だろう?」  その言葉に真面目過ぎと僕は笑った。ああ、こういうところも好きだ。なんで忘れてたんだろう、この手も顔も声も。 「はるちゃん、キスして?」  さっきしただろうと戸惑いながら言うはるちゃんの指に僕の指を絡ませた。待ってても来なくてじれったく思いゆっくり顔を近づけるとゆらゆら揺らぐ瞳に僕が映る。  軽く触れる程度口づけではあったが、お互いの唇が重なった。  それが可笑しくて笑うと照れながらなんで笑うんだと言った。 「そんなはるちゃんを愛してるよ」 そんな君も好き~陸人の場合~ end

ともだちにシェアしよう!