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第6話

「…………はぁ」 「ごめんね、輝君。疲れただろう」  ぐったりと、ソファーに腰を下ろして力を抜く。俺の体重を柔らかく包み込んだソファーは静かに沈んだ。六時間に及んだパーティーがようやく終了して、俺は光瑠さんの部屋に来ていた。 「俺が婚約者なんて聞いてない」  疲れ過ぎて責めるような言い方になった。けど、疲れ過ぎて余裕なんて少しも無くて訂正する気にもなれない。そんな俺の言葉を素直に受け止めたらしい。 「うん、俺から伝えるからって広海さんに説明をしたんだけど。もし婚約をしたんだって言ったら、君に嫌がられてしまうかなと思うと言えなくて」 「今日が終わるのが寂しいとか思わせておいて……なんだよ、これからも会えんじゃん」  あ、今完全に拗ねた声になった。光瑠さんを見上げると、少し驚いている顔をしている。 「輝君も寂しいと思ってくれていたの?」 「…………今日、楽しかったから」 「ッ……輝君」  両腕を広げた光瑠さんに抱きしめられる。 「ぁあ、輝君が可愛すぎて死にそうだ」  頬擦りをされている。 「勿論、俺はいつだって君に会いたいよ。いつでも会いにおいでよ。っと、服を着替えようか。それとも、着替えさせてあげようか?」 「光瑠さんも早く着替えた方がいいと思う」 「そうだね」  離れていく腕を引き止めたいと思った。 「お待たせ。遅くなってごめんね」 「ッ……美味そう……」  会場で美味そうな料理を眺めながら、会話に付き合った。それが今、ふわふわと湯気が立ち上る状態で目の前にある。 「お腹空いたよね、それじゃあ食べようか」  一口入れると、美味さが全身に染み渡った。すぐ目の前で光瑠さんは姿勢よく食べているけど、姿勢に気にする余裕はなかった。 「美味かった……」  空腹が解消されて満ち足りた気分で、俺は再びソファーに沈み込んだ。あー、このまま寝れそうだ。 「約束だからね。名残惜しいけど、ちゃんと家まで送っていくよ」 「えっ」  驚いて体を起こすと、光瑠さんも驚いた顔をしている。 「もしかして、今晩も君と一緒に眠っても良いのかな」  ソファーに座る俺の前に、膝をついて見上げてくる。王子が膝を床につくなんてと思いながらも、向けられる甘やかな笑みに心臓が跳ねた気がした。 「勝手に婚約の話を進められて怒っているかと思っていたんだけど。輝君、俺のこと受け入れてくれていたんだね。凄く嬉しいよ。ねぇ、輝君。昨日みたいにキスをしても良い?」  ジ、っと見つめられる。きっとまた気持ち良くなっちゃうのは分かっている。だからそれだけで頬が熱を帯びた。何も言わずに見つめ返すと、立ち上がった光瑠さんにキスをされた。触れるだけのキスを何度か繰り返されたあと、深いキスに変わった。  疲労感は強いのに、与えられるキスで簡単に快楽を引き出される。ずっとキスをされたかったし、また光瑠さんの手に触られたかった。

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