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第7話

「これは、押し倒すって言うと思う……」 「まぁ、倒したけど。電動だから押しては無いよ」  確かに背もたれをリモコンで倒されて、すっかり寝転んだ形になった。 「輝君、敏感だから優しく触ってあげないとね」  光瑠さんの指先で簡単に気持ち良くなってしまうのは、昨日の時点で分かっている。キスをされて背もたれが動いている間に、いつの間にか服の中に侵入していた手に直接乳首に触れられて敏感に反応した。昨日、風呂場で泡塗れて弄られて快楽を知ってしまったせいで、こんなにも簡単に反応する。 「気持ち良い?」 「んんっ、」  耳元で喋るのとかずるい。 「本当、輝君って泣かせたくなっちゃうくらい可愛い」  そんなうっとりした顔で見つめられても、どんな顔をしたら良いのか分からない。光瑠さんは凄く楽しそうに見える。 「昨日と同じで触るだけだから、怖がらないで」  頷きかけて、昨日を思い出してしまった。 「……光瑠さん」 「ん?」 「キスしたい」 「良いよ」  ぁあ、やっぱりキスされながら触られると凄くいい……。 「暑い…………」 「うん、頬も赤くなってる」  いつも暖かい光瑠さんの手が少し冷えて感じるのは、俺の体温がそれだけ上昇してるんだろう。なんて冷静な振りをしてみても、口からは喘ぎ声が止まらないし、中にある光瑠さんの指を締め付けているのが自分で分かる。 「嫌だったらちゃんとそう言ってね?」 「……ん」  初めての感覚に戸惑いはあっても、嫌だとは思ってない。それどころか、全身に触れてもらえることに嬉しささえ感じている。  ぁあ、光瑠さんの腕の中に飛び込みたい。ソファーの上じゃなくて——。ワケの分からない感覚が押し寄せてきて、俺は夢中で光瑠さんに手を伸ばした。 「落ち着いた?」 「……ぁ、今……俺……」  いつの間にか息が荒くて、苦しさを感じる。って、首に腕を回して光瑠さんに抱きついていた。 「ッ、あ、ごめんなさい……」  慌てて手を離す。 「謝らないで。イく声が耳元で聞けて最高だったしね」  うわぁぁあ、そりゃそうだ。恥ずかしい。 「ッ……忘れて、下さい」 「ごめんね。無理」 「即答しなくても」 「こんな、可愛い子が俺の婚約者だなんて。俺は本当に、幸せだよ」  あ、すっかり婚約者の話を忘れていた。 「本当に俺を婚約者に?他にもっと良い人がいると思いますけど」 「俺は輝君だけが良いんだよ」  そんな甘やかすみたいな顔で、即答されたらつい嬉しくなってしまう。でも、王族は愛人いっぱいいるって言うしなぁ。確か、国王陛下も王妃陛下以外に女性がいたような……。  ぁあ、俺はこの人の特別になりたいと思っているんだ。他の誰にも触れてほしくないとさえ願ってしまう。本当に言葉通り、俺だけならどんなに幸せだろうと夢を見てしまう。こんなに胸が苦しいのは。 「輝君?」 「キスがしたい」 「うん」  望み通り与えられるキスでこんなにも幸せを感じるのに、胸の苦しみは消えない。他の誰かにもこうして優しいキスをするのかと思うと、悲しく感じる。 「光瑠さん……」 「ふふ、本当に、輝君が可愛くて困る」  額同士がくっつく。 「そろそろ汗が冷えてきただろう?風呂に入ろうか。大丈夫、ちゃんと洗って髪を乾かしてあげるから」 「……ん」  ちゃんと起きていよう、と思ったのに結局俺は髪を乾かしてもらう心地良さに負けて眠りに落ちてしまった。

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