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きっと大人の安藤だったら槊葉を抱きしめて気の利いた言葉の一つや二つかけただろう。今の安藤はそれができない子供なのだと思うと、少しだけ胸がすっとした。
「安藤のこと毛嫌いしてごめん」
「え……」
「夏菜ちゃん狙いなのかと思って勝手に勘違いして」
罪悪感を拭うために何も知らない安藤に謝った。面と向かって素直になるのは難しいから夢の中で。
突然わけのわからないことを話し始めた槊葉に安藤はきょとんとしている。
「その制服桐南高だろ。同じクラスにいない? 水上夏菜」
「水上さん? ……いる」
「その人、俺の好きな人。小さい頃からずっと好きだったのに……さっき婚約者紹介された」
相手の男の顔を思い出すと涙があふれてくる。ズズッと鼻をすすれば不器用な少年に学ランの袖で涙を拭われた。
「……安藤、おまえ童貞だろ」
慰められるのが恥ずかしくなって軽口をたたくと、彼は気にする素振りもなくうなづいた。あんまり淡々としているのでさりげなく疑問を口にする。
「夏菜ちゃんのことタイプなんじゃねえの」
「……わからない」
いつもの安藤からは考えられないほど硬派な言葉に耳を疑った。
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