12 / 20

11

夏菜に興味がなく、その上童貞とくれば好感度はうなぎ登りだ。 もっとも夏菜に惚れていようが惚れていまいが、もう関係のないことだけれど。 「はあ……勝手に意識して威嚇してバカみたい。夏菜ちゃんから見たら俺なんかクソガキなんだろうな」  人目もはばからず大粒の涙を流す男を気の毒に思ったのか、安藤が背中にそっと手を伸ばし、あやすようにポンポンと叩いた。 「……俺は素直でいいなって思う。水上さんもきっとクソガキなんて思ってない」  静かな声でそう言われるとかえって説得力が増す。彼の言葉がストンと胸に落ちて、槊葉は不思議な気持ちになった。  現実逃避の末に逃げ込んだ夢の中、わざわざ安藤なんか登場させなくても……と不満に思っていたが、濁ったフィルターを取り払えば何もかもが違って見える。 「なあ見て。俺の夏菜ちゃんコレクション」  今度は自分の服の袖で涙を拭って、槊葉はスマホの電源をつけた。  夏菜と会うたびに撮影した動画を自分で編集したデータがたくさんある。便利なアプリに頼らず地道に仕上げたそれらは槊葉の宝物であり、唯一の趣味だ。

ともだちにシェアしよう!