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悔しげにうつむく少年を見て、槊葉は瞬きを繰り返す。こんなに自信のなさげな安藤ははじめて見た。励ますことなく珍しい状況をしばし堪能してから勢いよく立ち上がった。
「そっか。高校生ならまだアートの腕もヘボなんだな! よし、せっかくだから安藤の恥ずかしい過去を撮ろう!」
突然ひらめいた妙案ににんまりと人の悪い笑みを浮かべる。
絶望の底に突き落とされ、夢とはいえ十七年分もの時間を大きく移動してきたのだから、これはもう立派な旅行だ。失恋の傷を癒やすために安藤を利用したって罰は当たらないだろう。
「おい大輔、おまえのヘボ作品……えーっと、ビー玉で作った作品ない?」
気が大きくなった槊葉は、どうせ夢の中だからと安藤を呼び捨てにする。それを咎めることなく彼はわたわたと制服のポケットを探った
「……えっと、これなら」
差し出されたのはワイヤーを使って人の形を模したビー玉のキーホルダーだ。予想より随分きれいな仕上がりだが、少しばかりワイヤーの処理が甘いのが素人目にもわかる。
「なあ、これ顔描いていい?」
えっ、と目を見開いた安藤は、けれど快諾して、ねだられるまま油性マジックを槊葉に手渡した。シンプルに目と口だけを描き足し、金具を外して撮影準備は整った。
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