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第6話
一週間前に再会して初々しいやりとりをしていたはずの俺たちは、不思議と、今現在は相性ばっちりでこういう関係になっていた。
これという名前をつけるのは難しいけれど、幼馴染みで、友達で、同居人で、毎日セックスする仲、というところだろうか。
出会いの時にはもちろんこんな風になるなんて予想もしていなかったけれど、相性が良かったとでもいうのか、お互い、きっちりしすぎていない性格だったのが良かったらしい。
むしろ性格自体は正反対って感じで、普通に出会っていたら友達になりそうにないタイプだと思う。だけどその反対具合が良かったらしく、驚くほど見事に噛み合った。
本当に見事な凸と凹だと思う。
大抵のことには適度に折り合いをつけられて、自分の譲れない部分は相手が折れる、ということが自然とできる関係というのはなかなかないと思う。しかもこの短期間で、だ。
だからもう、相性が良かった、としかいいようがない。
それでも三日程は普通の同居人だった。事のきっかけは本当にベタなこと。
飯を食い終わった後に、野球中継があることを思い出してテレビの前に飛んで行った時に、それを見た志信が言ったんだ。
「そっか。竜くん、野球好きだったもんね」
「……そうだけど、なんで知ってんの?」
「前に竜くんが野球してる写真見たから」
「なにそれ」
当然のように言われたその言葉は、本来ならちょっと前に会ったばかりの志信は知りえない情報だ。そんな細かい話をするほどに喋ったわけじゃないし、なによりも写真の話なんて聞いたことがない。
なんで小学校に上がる前に離れた志信が、小学校に入ってから始めた俺の野球の写真を見ているんだ。
「何枚か持ってるよ、昔の竜くんの写真。おばさんが送ってくれた」
「なんだよそれ、ずるい! お前のアルバム見せろ!」
俺はちっともそんなの知らない。あの日の朝まで俺は志信が可愛い女の子だと思っていたし、だからここまでの成長過程なんて一切見たことがない。それなのに志信は俺を知っていたとか、そんなの不公平じゃないか。
むしろ、そんな前から連絡を取り合っていたことを知らない。しかも勝手に写真を送っているなんて、初耳すぎる話だ。
ともかく志信だけが俺の過去を知っているなんて不公平だと半ば強引に志信の部屋に押し入り、荷物の中からアルバムを引っ張り出させた。
俺が知っていたのは小学校に入るまで。
そこからはぐんぐん背が伸びて男らしく変わっていて、これをちゃんと見ていたら「しの」が女の子っていう考えはすぐに捨てていたはずだ。
「あ、でもこれ可愛い」
「中学の文化祭で女装させられたんだよ。……あんま見ないで。恥ずかしいんだから」
「いいじゃん、可愛い。そっちは? それいつの?」
「これは……」
普通とは逆に徐々に時代を遡っていって、辿り着いたのは俺の知ってる「しの」の頃。今改めて見ればそれほど女っぽいわけでもないけど、やっぱり素直に可愛いと思う。
そんなことをアルバムを見つつ話していたら、妙に距離が近づいて、本当にノリでなんとなくキスをしてしまった。
昔の写真を見て、本当にこいつが「しの」なんだと思ったら、思わずしてしまった。それだけ。
でも実際してみたら男同士とかよく知らない相手とか、そういう違和感も嫌悪感もなく、むしろこうするのが自然みたいな気がして、そのまま何度もキスをした。
顔に触れ、角度を変え、徐々に深まり……一度入ってしまったスイッチはなかなか切れず、完全に友達の域を超えた熱の入り方をし出し、俺が志信を押し倒したところで我に返った。
とは言っても冷静になったと言うよりかは、これからどうするかで迷ったからなんだけど。
現実的な問題として、このまま進むのか、進むとしたらどうするのか。
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