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第7話

「……本当の許嫁だったら、このまんましちゃうんだろうけどね」  志信も同じようなことを思ったらしく、濡れた唇でそんなことを言うもんだから、気になって二人して男同士ってのはどうやってやるもんなのか調べてしまった。  恐ろしいことに欲しい情報は簡単に手に入り、詳しいやり方を見てしまったらより興奮してしまい、その場ですぐに実践した。  俺よりも背の高い、完全に男である志信を抱いた。我ながら欲望に忠実で見事な行動力だったと思う。  やり方自体は単純なことだから勢いでも一応なんとか出来はしたけど、色々足りない感じがしたからその後すぐに俺が薬局に走った。この勢いがなかったら、たぶん俺たちの関係はただギスギスしたままで終わっていたと思う。だけど帰ってきた俺を待ちきれないとばかりに受け入れた志信の態度で本気になった。  勢いじゃなくて、ちゃんと志信を抱こうって。  それですぐに二回目をして、二人で色々と学んでいったんだ。 「いっ……たい、たちゅ、もうちょっと濡らして」 「おっけ。てかお前今『たちゅ』っつった?」 「言ってない。……んっ、もすこしゆっくり」 「ゆっくりの方が痛そうなんだけど」 「でも、一気には恐い、から」 「さっき書いてあったじゃん。口開けて、体楽にして。そう、そのまんま向こう向いて力抜いとけ」 「はっ……?!!??」 「……ふぅ。どうだ、痛い?」 「いたい。だからまだちょっと動かさないで」 「一旦抜く?」 「ダメ」  最初の時はお互い必死であんまりよくわかっていなかったんだけど、こうやって一つ一つを意識してしようとするとなかなか大変だ。  さすがにまだすぐに気持ち良くはなれない志信は、それでも目の端に涙を溜めながら気丈に言い張ってる。 「でも痛いなら」 「ダメって言ってんでしょ。たちゅはいっつもせっかちなんだから。さっきだって」 「ほら、やっぱ『たちゅ』っつった。それカワイイ」  いっぱいいっぱいになってるのか、さっきからナチュラルに昔の呼び名に戻ってる。そういえば最初の時も呼んでいたかもしれない。その時は俺もテンパってたからよくわかっていなかったけど、どうも本人も意識していないらしい。  でも、意識してないからこその呼び名は昔の可愛いしのを思い出させて、そのしのとこんなことをしてるかと思うと余計興奮した。 「言ってない。あ、ちょっと動くなって……んっ」 「だいじょーぶ。してる間に慣れるって」 「あっ……も、たちゅ……っ」  このままじっとしていても仕方ないし、まだゴーサインの出ていない志信を緩やかに突き上げる。ぎこちなかったとはいえ一回したことだし、後はもう慣れるしかないと思うんだ。  で、結局のところ色々用意をしたおかげでそれなりにお互い気持ち良くなれて。  そうやって、なんとかこなした二度目以降、俺たちは何度となく体を重ねた。飯を食うとか風呂に入るとか、そんな感覚。夜のたびに聞くのはするかってことじゃなくて、どっちの部屋かということぐらい。  恐ろしいことに、親がいない一つ屋根の下で過ごしている俺たちにストップをかける者は誰もおらず、やりたい放題とはまさにこのことってくらい毎日正しくない保健体育の勉強を繰り返していた。  かと言って、自堕落というのとはまた違う。  きっと俺一人で暮らしていたら、こんな風に毎日をちゃんと過ごしていなかったと思う。毎日夜更かしして、適当に昼頃起きて、やっぱり適当に飯を食って。だらだらとどうしようもない人間になっていたはずだ。  だけど一緒に住む相手がいることで、なんとなく生活のリズムが出来て、それなりに充実した日々が送れるようになっていた。

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