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第2話

家に帰って夕飯を食べ、さっさと自分の部屋へと戻ってきた。 ベッドに寝転がって、春真から借りてきた本をひらく。 大災害が起きて、たったひとつの国として統制された元日本が舞台の、近未来型SF小説、というらしい。 国へ忠誠を誓うことが絶対の世界。 それに疑問を抱く白髪(はくはつ)の主人公、紫庵(しあん)と、身分の違いから、隔離地域で生きている、黒髪の琉依(るい)、どうやら女だったらしいが一人称がオレで茶髪の、春乃(はるの)が、政府の中枢であるコンピュータ、マザーというものを破壊しに行く、というコンセプトらしい。 読み進めてみれば、純粋に面白い。 普段から本をよく読む俺は、小一時間で読み終えてしまった。 「…面白かった」 春真に進められたんだと思うとちょっとむかつくけど。 俺はふぅ、と息をつき本を閉じて仰向けになる。 ……やるとしたら、さしずめ、紫苑が紫庵で、俺が琉依で……春真が春乃か。 あいつ、名前が似てるからって持ちかけてねぇよな。 …じゅうぶんにありそうだけど。 というか、紫庵と琉依が妙に距離感近いというか…むしろ男同士でほぼほぼ恋人ぽいっていうか…。 妖しい雰囲気醸し出してるんだけど…。 まぁ、いいけど。 俺とくにジャンル気にしないし。 ほんのいっときぐらい、くだらないことしても。 そう思って俺は本を鞄にしまい、そうそうに眠りについた。 口では馬鹿にしておきながら、どこか一番楽しみにしているのはきっと、俺だった。

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