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第3話
次の日、半分寝ぼけたまま教室につくと、
「あ!琉依くん、おはよぉ!」
ぱあぁっと顔を輝かせた紫苑が、例の名前で俺を呼んでかけてきた。
「……引くわ」
「なんで?!」
「はよ、依吹。どうだった?あの本」
「あぁ、うん。なかなかよかった」
普段、勉強以外に興味なさそうにしている春真でさえ、心なしか声が弾んでいる。
こいつら…子どもの頃にごっこ遊びさせてもらってないのか……?
なんて思うくらいには、ふたりとも、きらきらと目を輝かせていた。
「じゃあ、じゃあ、やってくれる?!」
「…いいけど。普通に名前変わるだけだろ…」
「やったぁっ!ありがとう!」
満面の笑みで抱きついてきた紫苑に、思わずどきりと心臓が鳴る。
隣の春真も、目を丸くして驚いていた。
紫苑て…こんな積極的だっか?
俺より背が低いせいで、紫苑のふわふわした髪が首に触れて、落ち着かない。
「紫庵 」
役の名前で呼んだ。
パッと顔を上げる紫苑。
俺は、紫苑の身体を引き離しながら言う。
「“後先を考えずに行動するのは、あんたの悪いクセだ”」
「あ!琉依のセリフ!」
嬉しそうに声を上げる紫苑に肩をすくめると、
「…1回読んだだけなのに、もうセリフ覚えたのか……」
春真が呆れた声を出した。
「普通だろ」
「……依吹だけだって…」
ため息をつかれたことに少しイラッときて、
「…春乃。授業始まる。席までエスコートしてやろうか?」
「……うるさい。キザったらしくてうざい、琉依」
あのな、春乃って、そんな毒舌キャラじゃなかったと思うけど。
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