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第2話

一夫一妻制で第一子相続制。 相続争いをなくす為の制度だが、王の器ではなくても、血筋だけで王位に就くことになってしまうのだ。 側室制度がない為、むやみやたらと王族が増えることはないが、子のなさない王も現れるのだ。 その時は相続特例として、王・女王に子がいない場合や王太子が死去した場合に続子がいても他の王族の次世代から王・女王が選ばれる制度が設けてあった。 継続してきた系統から、傍系の系統に移ることが、しばしおこることがあった。 それが、二千年近く一国が生きながらえてた所以だった。 現王の弟が僕の父だ。 王が脆弱だった為、王太子時代から弟である父が補佐として傍らにいた。 それが簒奪者とみなされ廃嫡された。 王族の位置から一国民におとされたのだった。 私財は剥奪され、両親は朽ちかけた古城に居を移し、ひっそりと世間から閉ざされた暮らしをしている。 体のよい幽閉だ。 処刑を免れたのは王の温情だというが、見せしめという辱しめをうけて、生きながらえているほうが罰されていた。 甥の僕は、従兄弟の王太子にもしものことがあれば、僕が次代の王になってしまう可能性が大きい。 僕にもしも子供がいれば、次々代のの王候補にあがってしまうのも許せないのか、一生独身を貫き、子をなさぬようにするために神殿に放り込まれ、神職につかされた。 10歳になったばかりの雨期の季節のことだった。 混血の多いイリス国民だが、王族は王族同士の婚姻をくりかえし、混じりのない血と黒髪黒目を受け継いできた。 稀に先祖返りと言われる青い目の王族が生まれてくることがあった。 僕の目は黒い。 だが、燭台などの炎を見ると、青く変色するらしい。 建国王の目は深い青い目だったそうだ。 そんなことが理由で、廃嫡されたと聞かされたのは神職たちの(さげす)んだ噂話からだった。 なんて馬鹿らしい理由だ。 奇形児に畏れて、処刑することもできず。 迷信を信仰と履き違えている。 信仰心のない自分が6年間誓詞を詠唱しているが、神託が降りることもない。 建国王は軍人であると同時に神官でもあった。 多才な才能とカリスマ性を備えた人物像が窺えた。 建国から1800年、近隣諸国の中心と言われる王国だが、内情はわけのわからにい私心に支配された矮小な統治者の国だった。 本来なら高位の神官を依頼していた筈が、末端の神官位のない自分が選出されてのには理由があった。 この春に成人を迎えた僕は、体のよい自国からの追い出しを受けたのだった。

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