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第5話
あのクラスの中じゃ頭はいい方に入るはずで、教師の評判も悪くない。
俺に突っかかってくることだけが、俺の中で問題だっただけで、ただ派手にしている普通の高校生だと認識していた。
それが、レイプ好きだと……。
一度深呼吸をして、目の前で煽る栗原の乱れた服を直した。
「このことは黙っておくから、今日は大人しく家に帰りなさい」
「えーなんで?続きは?」
「はぁ、お前はさっきから何を言ってるんだ」
「……俺家ないもーん!」
「嘘をつくな、これでもお前の担任なんだ……今から送っていくか?」
分かりやすい嘘を言いやがって……。
自分が担当している生徒の家族構成くらいは、ある程度頭に入っている。
特に、学校でも目立つ栗原のは。
「帰りたくない……」
「帰りたくない?」
「いい!俺その辺で寝れるし!」
その辺……?
そう言いながら、辺りを見渡す栗原の視線の先には、人通りの少ない路地裏や公園が見える。
親は何をしてるんだ……
ただの家出なのか?
「その辺って……」
さすがに、生徒の住所までは頭に入れていない。
もうこの時間じゃ学校も閉められ、生徒の住所を特定するために戻ることがあれば、俺は一瞬で刑務所行きだ。
「俺どこでも寝れるから大丈夫だって!」
どこかいつもと違う雰囲気の栗原に、帰らない理由を聞けなかった。
「……栗原、とりあえずうちにおいで」
さっきの発言と行動、どれを取っても不安でしかない。
このままここに置いて行くわけにもいかない。
俺の口は、勝手に口走っていた。
「え!それは悪くない?」
栗原からの意外な言葉に、ビックリする。
俺にレイプが好きと言ったり目の前で興奮したりするのに、今更何を考えているんだろう。
「ふはっ、そこで引き下がるなよ……さっきまで誘ってきてたくせに」
変な気の使い方をするから、つい笑ってしまった。
数ヶ月ぶりに、誰かと笑って話している気がする。
「直ちゃんって笑うの!?」
あ、しまった。
さっきから非日常なことが多く、いつの間にか生徒に素を出していた。
「あー普段はあれだ、そのー」
やばい、口調まで乱れてきた。
『やばい』なんて使ったのは、いつぶりだろう。
いや、そうじゃない!
生徒とも教師ともせっかく距離を置いてきたのに、一気に縮め過ぎている。
ましてや、栗原を家に入れようとするなんて……
「直ちゃん、普段はわざとあんな壁作ってるんだね」
「いや、あー……仕事のオンオフみたいなものだ」
「へぇ、なんであんなに生徒を寄せ付けたくないのか分からないけど、弱々しい先生もいつもは演じてるんだ?」
ニコニコとキレイな顔で笑いながら、栗原は俺に近づいた。
俺のことは何も知らないはずなのに、全部を見透かされている気がして動揺が隠せない。
「その秘密、バラされたくなかったら俺とえっちしてよ……先生」
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