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第9話

朝、パンの焼けるいい匂いで目が覚めた。 寝室からリビングを覗くと、キッチンに栗原が立っていて、朝ご飯を作ってくれているようだった。 残り物も、そんなにいいものなかったと思うけど……。 「直ちゃんおはよう!お腹すいた?勝手に冷蔵庫とか漁っちゃってごめんね?」 「あ、あぁ…おはよう……ありがとう」 寝起きでぼーっとしたまま返事をして、何も考えずソファーに座った。 すると、無言で熱々のコーヒーがテーブルに置かれ、びっくりした。 「直ちゃん意外と料理するんだね!キッチンも冷蔵庫も整頓されてて直ちゃんらしいけど」 「それは俺のセリフだ。料理できるんだな」 栗原は本当に料理ができて、有り合わせなのにエッグベネディクトが出てきた。 しかも、スープ付き。 「……ポーチドエッグが作れる男子高校生ってすごいな」 「簡単に電子レンジでできるんだよコレ」 「それでもすごいよ。いただきます」 「お口に合うか分かりませんが」 普段の栗原から想像もできないほど、恥ずかしそうにしている。 「んっ、うまい!」 「直ちゃんって意外と顔に出るんだね」 栗原の作った料理は、本当に美味しくて思わずにやけた。 栗原は、違う意味でにやけていた。 「そういえば、今日休みでよかったね」 「そうだな……体は大丈夫か?」 今更だけど、俺は生徒を犯してしまった。 朝からこの話もどうかと思うが、ちょっと触れておきたい理由がある。 「大丈夫ー!けど直ちゃんが思ったよりSでビックリした」 そう言って、栗原はヘラヘラ笑う。 「いつも昨日みたいなことをしてるのか?」 「そんな深刻な顔しないでよーせっかくの料理も台無しになっちゃうよ!」 「……そうか」 なんだか、何も言う気分になれなかった。 2人して丁度、ご飯を食べ終わったので片付けようとすると、素早く栗原が動いた。 「俺が片付けるから大丈夫!好きなことしてて!」 「ありがとう。ちょっと電話してくるな」 栗原の両親に電話をしないとと思い、栗原に甘えて席を立つ。 「直ちゃん!電話ってどこに…?」 「栗原のご両親」 「いや、だめ……電話しないで」 さっきまでと雰囲気が急に変わって、弱々しい栗原になった。 多分、俺はこの顔や話し方に……弱い。

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