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目を覚ましたのは午前三時だった。飲みながら二人でリビングで寝てしまったらしく、飲み食いした残骸がそのままになっていた。アルコールが抜けきっていないせいか怠く、トイレに立ったついでに水を飲む。
――どうしても辞められないんです。
酒の力でなんでストロベリーパートナーに在籍しているのか聞いたら遠野はそう答えた。
――借金?
――それだけならよかったんですけど。
話したくなさそうだったからそれ以上は聞かなかった。
換気扇を回してからリビングに戻る。
ソファベッドの下で遠野は大きい体を丸めて寝ていた。朝方になって少し寒いからだろうか。
寝顔を見に行くと普段より幼く見えた。そう言えば春也より三つ若いんだっけ。
寝室から厚手のタオルケットを持ってきて遠野にかけると、うっすら目を開けた。
「まだ三時だよ」
教えると目を閉じてまた寝息を立て始めた。
目元の腫れはいくらかましになった。酒のせいか少しむくんでいるが、風呂にでも入れば大丈夫だろう。
この部屋にまた誰か来るなんて考えもしなかった。
しゃがんだまま少し脂っぽい遠野の髪を触る。遠野はきれいな顔をしていて、女の子達が騒ぐ気持ちもわかる。
寝返りをうった遠野がこっちを向いた。へこんだビールの空き缶が僕の足に当たる。
昨日、抱いてと言われなかったことを少しだけ残念に思っている自分がいる。
それでもお金を払ったから抱いたら駄目なんだけど。
我ながら即物的と言うか。いや、抱きたいセックスしたい、と言うよりはただ人肌が恋しいだけのような気がする。でも遠野はノンケだしつき合うのは無理だろう。春也みたいに別れることになったら次こそ立ち直れない。
お酒を飲みながらまさかと思って借金のことを聞いたら返済中のような口ぶりだった。
どうしても辞められないのなら、その理由はわからないけど返済の足しにはなってあげられる。
猫はもう少し後でもいいか。
時々、遠野を買って一緒にお酒を飲んだりご飯を食べに行ったり。
「お金を払っているうちは、僕の恋人でいてくれるかな」
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