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ユノ

僕の恋人であるユノは若くして、この宇宙船の船長。 ヒューマノイドと呼ばれる種類の宇宙人で、高度な技術と知識で他の宇宙人たちと関係を築いているらしい。 「ソラ!」 「ユノ、もう仕事、終わったの?」 「うん。次行く星のことで、少しね」 「次に行く星って、どういう所なの?」 ユノは僕をテラスの席に誘導し、座らせる。 アンドロイドが温かい飲み物を持ってきてくれた。 「次に行く星はE-2849っていう惑星で、太陽の周りを回っている惑星なんだ。どういう人種が住んでいるのかを観察するんだ」 ユノの仕事は他惑星の観察と調査。 難しいことは分からないけど、文明の発達やそこに住む人々のことを調べる仕事らしい。 僕は飲み物をちびちび飲みながら、話を聞く。 実は熱いものが苦手で、少しずつでしか飲めない。 ユノみたいに、何でもかっこよく出来たらいいのになぁ。 「相変わらず、熱いのが苦手なんだね。今度から冷ましてから持ってこさせようか?」 「いいよ!さっきまで少し寒かったから丁度いい」 「そうか。あ!ソラに見せたいものがあるんだ」 そう言って、ユノは僕が飲み終わるのを見届けると、ユノの部屋まで手を引かれた。 ユノの部屋の前まで行き、手をかざすと、薄緑色のタッチパネルが現れ、ドアが開いた。 ユノのデスクにはいくつかの画面があり、惑星の映像が映っている。 「ソラ、君にプレゼントだ」 見せられたのは、美しい緑の星。 「ユノ?これは……?」 緑の星を見せられても、よく分からない。 僕が困惑して、ユノの顔を見ていると、ユノは少し悲しそうな顔をした。 「もしかして……嬉しくない?」 「えっと、嬉しくないっていうか……どういうこと?」 「もうすぐ、君と出会って一年だろう?そろそろ僕らも惑星に定住してもいい頃からなぁって思って……。もしかして、記念日忘れちゃった?」 記念日……。 ユノと出会って、もうそんなに経つのだろうか。 僕としたことが、すっかり忘れていた。 ユノは僕の……僕の……。 あれ……?ユノは僕の、なんだっけ? 「ソラ」 ユノは僕の両肩にぽんっと手を置き、じっと僕を見つめた。 「君は壊れた宇宙船に乗っていて、宇宙を漂っていた。僕は君を助け出した。残念ながら、君が乗っていた宇宙船はオーバーヒートを起こして、木っ端微塵になってしまい、君は助かったが、記憶がなくなってしまった」 そうだ。 ユノに助けて貰ったのが、ちょうど一年前。 それから、ユノは僕に良くしてくれて…… 「ソラの事を愛している。僕らは恋人だろう?」 「……うん。そうだね」 「恋人はいつか、生涯をともにするために、惑星に定住する」 「うん……」 「だから、君に惑星をプレゼントしたいんだ」 「え!?惑星を!?」 ぼんやりとした頭が急に現実に戻る。 惑星って、規模がでかすぎやしませんか?? 「ちょうど手頃な惑星があってね。僕の住んでた衛星都市とも近いし、立地も規模も丁度いいしね」 「でも、惑星って高いんでしょ……?」 そんな高価なもの、もらえないよ。 それをこんな記憶喪失のやつにあげるなんて。 「ソラと二人で新しい生活を送れるなんて、僕にとっては惑星より価値があることなんだ」 ユノは片膝をつき、僕の手を取った。 「この仕事が終わったら、僕と生涯をともにして欲しい。どんな星よりも大切にするよ」 こんな素敵な人が、僕の相手でもいいのだろうか。 「……もしかして、迷ってる?」 「僕でいいの?こんな冴えない平凡な奴で……しかも、自分が誰かも思い出せない不甲斐ない男でも、いいの?」 きらりと光るユノの青い目に、どこか懐かしさを感じてしまうのは何故だろう。 「ソラがいい。僕の”アルヌータス”が君を見る度に響くんだ」 ユノは立ち上がり、僕の手を自分の胸に引き寄せた。 トクントクンと、僕も同じ心臓の音がしていた。 アルヌータス。ユノ達ヒューマノイドの言葉らしく、僕には意味がよく分からない。 けど、そのアルヌータスが響く相手を見つけることは幸せなことなのだと教えてくれた。 僕にもアルヌータスがあればいいのに。

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