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青い星

「ごめんね、ユノ……さっきは記憶が混乱しちゃって……」 自分がすぐに『ユノの恋人だ』と言えなかったことを謝った。 「いいよ。君は人よりも辛い経験をしたんだ。記憶が混乱するのも無理はない。それより、もうすぐE-2849に着くよ」 「もう着くの?!」 「実は二、三日前から、その惑星に向かってたんだ。なるべく早く仕事を切り上げたくてね」 「どうして?」 「だって……早く、ソラと新しい生活を送りたいんだ」 ユノの顔が近づき、キスする寸前まで近づくと、ピピッという音と共にアルビータが画面に現れた。 『ユノ、もうすぐ目的地に着く。司令室まで来てくれ』 「アルビータ……尽く、僕とソラの邪魔をするんだな……」 『何のことだ?』 アルビータは分かっているのか分かっていないのか真面目に返答する。 「分かった。今行く」 「ユノ、僕も見に行ってもいい?」 「え……?」 ユノは少し困った顔をした。 いつもだったら、困った顔なんてしないのに。 「ダメ?」 「あー……いや、大丈夫だよ。一緒に行こう」 いつものユノの表情に戻り、僕を司令室まで連れていってくれた。 司令室はとても大きな部屋で限られた人しか入れない。 ユノが部屋の一番高い席に座り、僕はその膝の上に座らせてもらった。 司令室はちょうど宇宙船の天井部分にあたる所で、目の前のフロントガラスには目的の星が迫っていた。 「わぁ……青い星だ……」 真っ青な美しい星。 ユノの瞳みたい。 「あれがE-2849。地球と呼ばれている」 アルビータが司令席の下から解説してくれた。 地球という名前に聞き覚えがあった。 「この星、知ってるかも……」 もしかすると、この星に僕の記憶の手がかりがあるかもしれない。 「ユノ、僕、この星から来たのかな?」 ユノの方を振り返ると、見たことのないような無表情な顔で惑星を睨みつけてきた。 「ユノ……?」 「あ、ごめん……。もしかすると、記憶の手がかりが見つかるかもしれないね」 微笑んではくれるけど、どこかぎこちない笑顔。 「僕もソラの記憶が戻るように、協力するよ」 ーーー ソラを一足先に部屋に帰らせた。 ユノはふぅ……とため息をつくと、アルビータが近づいてきた。 「いつまで、こんなことを続けるつもりだ?」 アルビータの厳しい言葉がユノの首元にナイフのようにあてがわれる。 「いつまでって?」 「ソラのことだ。こんなこと続けていても、彼は本当のことを思い出す」 「……そんなことさせないさ」 「ソラが可哀想だ。本当のことを知らずに、無理やり記憶をねじ曲げられて……」 アルビータの言葉にユノは頭にカッと血が上り、思わずアルビータの胸ぐらを掴みあげた。 「それ以上、僕に口ごたえしてみろ……っ!ここから追い出すぞ……!!」 ユノの青い目は怒りで赤く色づいている。 怒りの形相で胸ぐらを掴まれても、アルビータは全く動じなかった。 アルビータの金色の目は、ただ冷たく、ユノを見つめていた。 ユノは乱暴にアルビータを離すと、司令室から出た。 怒りを収めるため、何回か深呼吸をする。 そのまま部屋に戻ろうとすると、テラスの椅子にソラが座っていた。星空をぼんやりと見上げ、何かを考えているようだった。 「ソラ……」 「ユノ!……なんか元気ないよ?」 やはりさっき感情を荒らげてしまったから、おかしな顔をしてしまったかもしれない。 「……大丈夫。何でもないよ」 「僕、ユノの話はいつでも聞くから……嫌なことあったら、言ってよ」 見上げてくるソラの顔が愛おしくて、たまらない。 自分の腕の中にソラを閉じ込める。 「ソラは……僕の恋人だよね?」 「当たり前!」 ニコリと笑うソラの顔にユノは波立っていた心がだんだん穏やかになっていくのが分かった。

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