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夢の中

『……本当に邪魔な子』 『誰が引き取るの?』 『うちはもう子どもが二人いるから……』 僕の周りに黒い陽炎のようなものが囲んで、皆が僕をいらないと押し付けあっている。 『……お母さん』 その輪の外れに小さな男の子が顔を覆って泣いている。 僕はその子の肩を叩こうと……。 「ソラ!!」 ハッと目が覚めた。 ユノが心配したように、僕を覗き込んでいる。 「大丈夫?苦しそうだ……」 「怖い夢を見た気がするんだけど……」 何だったんだろう。 でも、怖かったような記憶がある。 「怖い夢は忘れた方がいいよ。ソラ、僕は仕事に行ってくるけど、何かあったらすぐに僕を呼んで」 「うん。行ってらっしゃい!」 「行ってきます」とユノは僕の頬にキスをした。 ユノを見送ると、特に何もすることがない僕は宇宙船の中を散歩することにした。 あーあ、暇だな。 僕はぼんやりと歩いていると、いつの間にか立ち入り禁止の9番の部屋の前まで来てしまっていた。 やばい……ユノに怒られちゃう。 早く離れないと。 「ソラ?」 振り返ると、フードを被ったアルビータが立っていた。 「ここは立ち入り禁止だよ」 「ご、ごめん……ボーッとしてたら、こんなところに来ちゃって……ユノには言わないで!」 「言わないよ。ユノは怒ると怖いからね」 口元が隠れているからか、アルビータの表情はいつも読めない。 「とにかく、ここを離れよう」 アルビータは僕を連れて、テラスまでやってきた。 「ソラ、何か思い出した?」 「ううん……まだ何も思い出せない」 「地球の生活を見たら思い出すかも」 アルビータは僕の手を引いて、自分の部屋まで行くと、大きな望遠鏡が部屋の中央に置かれていた。 周りにはいくつもの水晶や鉱石などが飾られている。 何だか不思議な空間だ。 「ここを覗いて見て。君の顔や骨格を見て、地球の中のどこの国に住んでいるか推定してみた」 「そんなことが出来るの!?」 促されるまま、望遠鏡を覗いてみる。 目の前を鉄の乗り物が通っていく。 忙しそうに早足で歩く人々。 女性が小さな男の子の手を引きながら散歩をしている。 そして、紺色の制服のような服を着た男の子達か笑い合いながら歩いていた。 「あれ……電車だ……」 目の前を通っていった鉄の乗り物の名前をふと思い出した。 「あの制服!……あの服、僕も着てたような気がする」 「……今見てる国は日本という島国だよ」 「日本……」 僕と同じような年格好の子達。 そうだ。僕は日本人で……あの子達と同じように学校に通ってて……。 それで、どうしてここにいるんだろう。 「アルビータ……僕、まだちゃんと思い出せないけど。少しだけ思い出してきた」 「そのようだね。僕の部屋にまたおいで。この望遠鏡で地球の様子を見てたら、もっと思い出すかもしれない」 「うん」 「……でも、思い出はいい思い出ばかりとは限らないよ。嫌のことも思い出すかもしれない」 「それでも……僕は思い出したい。僕が何者なのか知って、ユノと一緒にいたい」 そうだ。僕が何者なのか分かったら、きっとユノも喜んでくれるはず。

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