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第4話

 僕は途中だった食事を再開し、その後シャワーを浴びた。  普段着を着るか寝間着を着るか迷ったけれど、隣にお邪魔するだけなので結局寝間着を選び――シャツと短パンという軽装だ――おつまみになりそうな作り置きおかずを持参して、お隣のインターホンをそっと押した。 「よ、いらっしゃい」 「ど、どうも……さっきぶり、です」  犬神さんもスーツからラフな格好になっていて、ますます格好良く見えた。僕が玄関に立ち尽くしていると、犬神さんは『上がれよ』って僕の肩を抱いて中に誘導してくれた。  なんかもう、仕草の一つ一つにドキドキする!! 「……なんかイイ匂いがするな」 「あっ、うちからおつまみになりそうなものをいくつか持参しました、これもお口に合うといいんですけど……」 「いや食い物じゃなくて、お前」 「えっ」  そう言って犬神さんは、肩を抱いたままの僕をグイッと自分の胸に引き寄せて、僕の髪に顔をうずめた。 「あ、あのっ!?」  安物のシャンプーや石鹸を使ってる僕なんかより、犬神さんの方が百万倍くらいイイ匂いがするんだけどぉぉ!?  犬神さんの胸板は同じ男とは思えないくらい厚くて、普段鍛えているのか腕も太くて力強かった。僕が全力で暴れても絶対に引き剥がせないだろう。引き剥がす気ないけど。  犬神さんが僕の頭を遠慮なくスンスン嗅いでくるから、僕も犬神さんに倣ってその胸板に鼻をこすりつけてみた。  ああ、ホントにいい匂いがする……匂いまでカッコイイなんて、ズルいなぁ……。 「やべぇ、コーフンしてきた……酒飲むと勃ち悪くなるし、先にヤる?」 「え?な、何を……ですか?」 「何って一つしかねぇだろ」 選択肢とかないの!?僕、全然話が見えないんだけど! 「んっ!?」  突然犬神さんが僕の顔を覗き込んできたと思ったら――そのまま、口を塞がれてしまった。 もちろん塞いだそれは犬神さんの唇で……僕のファーストキスだった。 「ンッ、ちょ……ふぁっ」  ちょっと待って!そう言いたくて口を開いたら今度はぬるっとした感触がして、し、舌が……犬神さんの舌が僕の口の中で暴れてるんですけどぉぉっ!?  なんでこんなこと……あ、でもなんか、気持ちいい……。  犬神さんの舌、熱くてにゅるにゅるって僕の舌に絡めてきたり、じゅわって吸いついてきたりして、唇も柔らかい。キスってこんなにきもちいいんだ……脳が蕩けそう……こんなことされたら僕、犬神さんのこと以外何も考えられなくなっちゃうよ……!  あまりの快楽に思わず腰が抜けそうになったけど、既のところで唇が離れたのでなんとか踏ん張れた。 「はあっ、はあっ……」  僕はいつの間にか、犬神さんの首に手を回して抱き着いていた。  なんという……でも、離れたくない……。 「遊、すげぇトロけた顔してんぞ。キス、そんなに気持ちよかったかよ?」 「はい……」  最初はびっくりしたけど……初めてなのに、凄く気持ちよかった。  でも……もう終わり、なのかな?  僕は少しの期待を込めて犬神さんを見つめた。すると、犬神さんの大きな喉仏がゴクリと上下するのが見えた。 「……もっと気持ちいいことしてやるよ」 * 「あっあっあんっ、あ~~!!」 「はぁっ、遊、イクっ!!」 「い、ぬがみさ……!あんっぁあっ!ぼくも、またイッちゃ……ッ!!」 「っく……!」  ――先程の宣言通り、僕は口では言えないくらいものっすごいこと……気持ちいいことを、犬神さんにされた。  最初は痛かったり苦しかったり、違和感を感じたりもしたけど、それを乗り越えたらこんな快楽が存在するのかってくらい、物凄い体験をしてしまった……。 「遊、もう1回いいか?お前の身体マジ良すぎ……処女だった癖にどエロいし」 「えっ!?ど……どうぞ!僕なんかで良かったら、いくらでも」 「……チッ、お前だからイイんだよ」  今、舌打ちされた?その後犬神さんがなんて言ったのかも、よく聞こえなかった。  本当は、これ以上されたら快楽で死んでしまいそうなんだけど……。  でも、それでもいいかなって思った。  今の僕は、明良のことも忘れて、この世に未練なんて何も無いから。  犬神さんみたいな素敵な人に気持ちよく殺されるなら、それって凄く幸せな最期じゃないかなって……。  うん、本望だよ。 「ひぃっ、あぁ!しぬっ、死んじゃ……っあっ、あぁ~~……!!」 「遊……っ!……あれ?おい、遊!?」

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