5 / 6

第5話

* 「ねえ遊ちゃん、最近ちょっと綺麗になったわよね。恋人でもできたの?」 「えっ……?」  僕が犬神さんとそういう関係になってから一週間、弁当屋の仕事中に突然、同僚の山口さんからそんなことを言われた。すると、後ろで調理をしていた店長も。 「あ、それ俺も思ってた!遊ちゃん、ついにコレが出来たんだろ?え?」 「いやっ……そのぅ」  グッと親指を立てられた。でも、どういう意味だろう。 「まあこんな可愛い子がずっと独り身なのがおかしかったのよね~。遊ちゃん、ここ最近ずっと元気がなかったから心配してたのよ。で、どんな子なの?相手は」 「こっ、恋人とかそういうのじゃなくて、お友達です……!」 「なんだ、まだお友達なの」 「ま、まだっていうか……」  犬神さんは相変わらず僕の隣の部屋に住んでいて、毎晩お互い部屋を行き来してその……いやらしいことをしている。こんなの友達じゃないよね……。  犬神さんは『俺と結婚しろ』なんて言ったけど、やっぱり男同士では結婚できないみたいだし、それも犬神さんの婚約話がなくなるまでの話だから……。 「おい、遊」 「ハッ!いらっしゃいま……い、犬神さん!?」  ボケっとしていたら、いつの間にかお客さん……というか犬神さんが僕の目の前にいた! 「昼メシ買いに来たんだよ。デラックス唐揚げ弁当ひとつくれ」 「は、はい! デラックス唐揚げひとつ、お願いしまーす!」  あいよー、と店長が返事をしてくれた。今は山口さんも厨房に入っていて、店内には僕と犬神さんの二人だけだった。 「なあ、今日も6時上がり?」 「はい」 「迎えに来っから、待ってろよ」 「あ……はい……」  でも僕はこんなふうに誰かに甘やかして貰ったことがないから……僕の方はもう、言い訳もできないくらい犬神さんのことが好きになってしまった。  自分でそれでもいいやって思ったくせに、ばかだな僕は……。  だって、アレしてる時毎回このまま死んじゃうんだって思うんだけど、結局いつも生きてるんだもんなぁ……犬神さんは僕が『死ぬ』って叫ぶたびにすごく満足そうな顔してるけど。    そういえば僕、犬神さんと会ってから全然明良のこと思い出してないや。  それはそれで明良も安心だろうし、僕としてもいいことだと思うけど、もし今の状態で今度は犬神さんが居なくなったら、僕はどうなってしまうんだろう。  自分でも分からなくて、凄く恐い……。 「ねえ、あの人が遊ちゃんのお友達なの!?会話が既に恋人同士だったわよ!本当は彼氏なんでしょ!?」 「い、いいえ……残念ながら違います」 「ええ!?でもあの人、遊ちゃんにベタ惚れって顔してたわよ!?」 「アハハ……ないない」 「あるわよ~!!」  本当にそうだったらいいのに。  犬神さんが僕のことを好きだったら……いいのに。
いいね
笑った
萌えた
切ない
エロい
尊い

ともだちとシェアしよう!