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第3話

 外の空気のおかげで頭は冴えた。膝に手をつき深呼吸を一回。2人は必死で走った。京也はかろうじて靴を履いたままだったが、青年は靴下だけだ。  一番近くの駅のそばまで走り、交番の灯りが見えた瞬間、2人は道端に倒れ込んだ。  ぜぇぜぇと荒い息が収まらない。滝のように汗が出て、ぶっ倒れそうなほど頭がグラグラする。さっきの香炉では何が炊かれていたのだろう。  いずれにしても、二度と吸いたくない香りには違いない。オメガの青年はしばらく真っ白い顔で脂汗をかいて咳き込んでいたが、唐突に路地に頭を突っ込み、背中を丸めて吐き始めた。 「大丈夫か?」  苦しそうに震える背中をそっと撫でると、青年はびくりと体をすくませた。だが京也を拒絶する余裕はないらしい。うつむき激しくむせ込んで、青年は生理的な涙を落している。  ひとしきり吐いたところで、青年は意識をなくした。  ふらりと落ちる体を咄嗟に抱え、京也はこの青年をどうしたものか、途方に暮れた。

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