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ぶれいく

  「はあ、はあっん……」  踏ん張った足の力が抜ける。 「こた」  俺の腕には新垣がいて、ハメられてる手錠も邪魔してて動かせない。床に座りたくても邪魔なものが多過ぎて、ついその邪魔なものに寄りかかり、足を曲げて座れる形となる。  俺の全部を新垣に預けてるとか。 「なんで、お前もイッてんの……」  扱かれた二本のモノは俺一人が出した量ではない白い液。ぬめぬめしてて、こいつのもちょっとだけ萎えていたのが目に入った。  俺が座り込めば道連れが当たり前の体勢に、新垣も床に腰を下ろす。寄りかかるしかない体も新垣自身、俺を頼ってくれた――と思っていたら爆笑もんだな……はぁ。 「そりゃ、航大と一緒だから。俺は航大を見ながらイケたりするよ」  いらねぇ報告すんな。 「だから、こうた。もうちょっと気持ち良くなっていよう?」  二人分の精液は粘っこく、ヌチヌチなんて聞いた事のない音を立てながら新垣はイッたばかりのモノをゆっくり擦りはじめた。  出したばかりはきついんだ……なにもない虚無感にひたすら浸って落ち着くのを待つ。それがいい。  新垣だってよくわかってるくせにどうしてまた動かすんだよ。  あ? もしかして回復がはやい?  だとしたらマジで勘弁。 「んん……に、がき……はッ、やめろっ!」 「――ッ、」  力があるかないかなんて関係ない。もう一度、イかそうとしている新垣の手を止めたい。そんな強い思いに振りきった力を出して新垣に頭突きをかます。  思いの外、俺の当たりは良く、新垣の当たりが悪かったのか、その一瞬で扱かれていた手が離れて、精液塗れのままぶつかったところを押さえていた。  そして隙を見て背中に回っていた腕を上げて、多少の自由を得る。  額を押さえ込んでる新垣の体を一回り縮こまった感じで難なく、くぐり抜けることが出来た。 「んー……!こたっ、痛ぇよ……!」 「離さないからだろ……」  雰囲気は一変、主導権というものが回ってきたんじゃないか?  モノを隠すようにしながらもべったりと塗れてる俺や新垣の精液でしまうにしまえないのがツラい。ツラい事ばかりでなんかもう、本当にツラすぎて、ツラいのがなんなのかよくわからなくなってくるゲシュタルト崩壊さに溜め息。  俺の腹が鳴った今も、溜め息でカバー出来てればな、って。 「あぁ、ごめんな……飯はとっくに出来てるから」  うわ、隠せてなかった。 「ハンバーグにメンチカツ、あとひき肉だけど肉じゃがな。それとスープにサラダ。ちゃんとシーザードレッシングで用意してる」 「……」  メインのバランスが偏る晩飯のメニューを口にしながら、新垣は普通に手に付いてる精液を舐めては拭き取っていた。  なんの躊躇いもなく、自分のだって混ざってる精液を、だ。  腕にまで伝ってる隅々まで、綺麗に。 「今持ってくるから、もうちょっと待ってて」 「……」  最後は額を押さえた時に付いた精液も、掬ってペロリ。……尊敬、なんて言葉が浮かんでもいいものだろうか。――いやよくねぇよ! 『タオルも持ってくるから』  最後に付けたして立ち上がる新垣は、こんな事をヤられても爽やかな青年に見えてしまった俺……そろそろ眼科に行かなくちゃいけないのかもしれない。  ばたん、と閉められて、いなくなった新垣。  ジッと、床に垂れている白い液を見つめる。それをどうしたもんか指で掬って、つい口元に持ってきてしまった。 「うわっ……やっぱ、不味いな」  ――作ってくれた飯は、白い液より何百倍も美味かった。  

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